T.R.Y.

2002/11/22 丸の内東映
織田裕二が戦前の上海で日本軍をペテンにかける。
B級映画と割り切れば、まぁこんなものかも。by K. Hattori

 上海の郊外には「上海影視楽園」という第二次大戦前の上海市街を再現した大規模なパーマネントセットがあり、そこでは『花の影』や『上海グランド』などの劇映画を始め、テレビドラマ、CMなど、今までに千本以上の撮影が行なわれているのだという。もともとスピルバーグが『太陽の帝国』を撮影した際に作った大規模なオープンセットを流用し、その後さらにセットを建て増ししていったものだとか。おそらく『T.R.Y.』はそのセットを使って本格的な撮影が行なわれる、初めての日本映画になるのではなかろうか。

 物語の舞台は20世紀初頭の上海。仲間たちと大小さまざまな詐欺を仕掛けてきた日本人ペテン師・伊沢修は、大物の武器商人をカモにしたことから命を狙われる羽目になる。そんな彼を助けたのが、清朝を打倒して新しい社会を作ろうとする中国人革命組織・中国黎明会のリーダー、関飛虎(グァン・フェイフー)だった。関は伊沢の経歴を知りつくしており、間もなく上海に運び込まれる日本軍の最新武器を強奪する手助けをしろと持ちかける。断れば伊沢は武器商人の放った刺客に殺されるか、命の恩人の依頼を断った恩知らずとして殺されるか、いずれにせよ命はないということらしい。伊沢は渋々この依頼を了承し、間もなく上海入りする東正信陸軍中将に狙いを絞る。ところが東中将はなかなかの切れ者。ちょっとやそっとでは騙されてくれそうにない。伊沢は二重三重の仕掛けで、東をペテンにかけることに成功するかに見えたのだが……。

 『ホワイトアウト』以来2年ぶりとなる織田裕二の主演映画。監督は大森一樹。今回の映画は本格的な上海ロケが撮影中から話題になっていたが、完成した映画はどうも物足りない内容になってしまった。もっとも「海外ロケ=大作映画」と思うのがそもそも間違いなのであって、これは上海のパーマネントセットを使いきわめて安上がりに作ったB級映画と考えるべきなのかもしれない。

 井上尚登の原作は未読だが、二転三転していく物語はそれなりに面白いもの。しかしそれがやけに平板に見えてしまうのは、主演の織田裕二がまるで大根だからだろう。彼は演技の幅がきわめて狭い。『踊る大捜査線』ではそれを「寝不足で反応が鈍くなっている」という言い訳でごまかし成功したわけだが、その彼に切れ者の凄腕詐欺師を演じさせようとしても無理があった。大根役者には大根役者の使い方があり、大根役者でもスターになった人は大勢いる。というより、スター俳優はまず例外なく大根なのだ。でもそういうスター俳優は、自分の大根ぶりを十分に自覚して、撮影中は監督にすべてを委ねてしまうはず。しかし織田裕二には、本人なりのこだわりがあるのでしょう。自分が捨てきれないのですね。特に髪型。なんとかしてよ。戦前にあんな髪型をしていたら、それだけで堅気の人とは見てもらえないでしょうに。詐欺師失格。

2003年1月11日公開 丸の内東映他、全国東映系
配給:東映
(2002年|1時間44分|日本)
ホームページ:http://www.try-movie.jp/

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DVD:T.R.Y.
サントラCD:T.R.Y.
主題歌CD:We can be heroes(織田裕二)
原作:T.R.Y.(井上尚登)
関連書籍:織田裕二 in 「T.R.Y.」
コミック版:T.R.Y.(芹沢直樹)
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