ゴーストシップ

2002/11/21 ワーナー試写室
ベーリング海に現れた幽霊船は40年前に消えた豪華客船だった。
恐さはほどほど。謎解きもそこそこ。ビジュアルは面白い。by K. Hattori

 イタリア船舶界の威信をかけ、1954年に就航した豪華客船アントニア・グラーザ号。だが1962年春、アメリカに向けて大西洋を航行していたこの船は、突然一切の連絡を絶って姿を消してしまう。それから40年後、小規模だが腕のいいサルベージ会社“アークティック・ウォリアー”のメンバーたちは、カナダ空軍のパイロットと名乗るジャックという男から、ベーリング海に漂う謎めいた船の話を聞く。現場に到着したメンバーたちがそこで見つけたのは、40年来行方不明だったアントニア・グラーザ号だった。船内は無人。海事法によれば、こうした場合発見者がその船についてすべての権利を保有することになる。やがて船内からは大量の金塊も見つかったが……。

 ゴーストシップ(幽霊船)とは、何らかの事情で破棄された船が、無人のまま海上を漂い続けること。嵐に遭遇して乗員が全員避難した後、船が難破しないまま漂い続ける。海賊に襲われて乗員が全員殺害もしくは拉致されてしまう。座礁し破棄された船が、潮の流れで再び洋上に流れ出る。幽霊船が出来上がる理由はいろいろあるが、特別の超常現象というわけではない。しかしレーダーや航空機による捜索が不可能だった時代には、夜の闇や霧の中から突然無人の船がヌッと現れる様子はさぞや不気味だったと思う。

 だがこの映画に登場するのは、そうした昔ながらの幽霊船ではない。レーダーも航空機も完備しているこの時代、無人の大型船が何十年も海上を漂い続けるなどあり得ない。当然これは世の常ではない何らかの力が働いているのであり、発見された船の中には超自然の力が満ちている。この船はただのゴーストシップではなく、この船そのものがゴースト(幽霊)なのだ。この船でかつて血なまぐさい惨劇があったことは、映画の冒頭で示されている。サルベージ会社のメンバーはそれを知らないが、観客はそれを十分に知っている。この船は呪われている。なるべく早く船から離れなければ命に関わる。やがて船内のあちこちに現れる幽霊や不気味な幻の数々。船は洋上で孤立した巨大な幽霊屋敷となり、そこに入り込んだ人間たちを次々に飲み込んでいく。

 ジョエル・シルバーとロバート・ゼメキスが設立したホラー映画専門の製作プロダクション、ダーク・キャッスル・エンタテインメントの作品。サルベージチームのリーダー役でガブリエル・バーンが出演している他は、小粒のキャストで占められた低予算映画だ。(低予算と言っても40億円ぐらいかかってるんですけどね。)CG全盛の今、あえてミニチュアを使って撮影したという海上シーンに迫力があり、また荒れ果てた船内の様子などもよくできている。完全に朽ち果てているダンスフロアが、あっという間に元通りになるシーンは素晴らしいでき。映画ならではのファンタジーだ。オープニング以上に、グロテスクな描写がエスカレートしないのもよい。

(原題:GHOST SHIP)

2003年1月11日公開予定 渋谷東急他、全国松竹東急系
配給:ワーナーブラザース映画
(2002年|1時間31分|日本)
ホームページ:http://www.warnerbros.co.jp/

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