ウエスト・サイド物語

2002/11/12 イマジカ第2試写室
ミュージカル映画の歴史にとどめを刺した傑作ミュージカル。
大画面で観るとダンスの迫力が違う! by K. Hattori

 シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」を現代ニューヨークに翻案したミュージカル『ウエスト・サイド物語』は、1957年にブロードウェイで初演されている。映画化は1961年。監督は舞台版の振り付けも担当しているジェローム・ロビンスと、後に『サウンド・オブ・ミュージック』の監督をするロバート・ワイズ。舞台のミュージカルを映画化する際はストーリーや曲目などに大きく手を入れるのが映画界の常識だが、この映画では曲順の変更はあるものの、基本的に舞台版をほぼ忠実にスクリーンに移し替えている。

 このミュージカルは歌って踊って最後はハッピーエンドというそれまでのミュージカル映画の定石を覆し、アメリカ国内の人種対立や移民問題という社会的なテーマを持ち込んだことで、かこ数十年培われたミュージカルの歴史を一変させた記念すべき作品だ。この映画の登場で、アステアやジーン・ケリーの無邪気なミュージカルは息の根を止められたと言ってもいい。だが「社会的なテーマ」だけでこの映画がすごいわけではなく、映画としても断然優れているからこそ、この映画は映画史に残る傑作として今も愛されているのだ。

 まずこの作品のよさは、何よりも音楽のよさだと思う。「サムシング・カミング」「マリア」「トゥナイト」「アメリカ」「サムウェア」などどれもが名曲ぞろい。しかし他のミュージカル映画と違って、この映画からスタンダードナンバーが生まれることはなかった。「トゥナイト」は名曲だしよく知られているけれど、それは映画音楽としてよく知られているのであって、独立したラブソングとして歌われることは滅多にないだろう。この映画の中ではそれぞれの歌が密接に物語と結びついて、そこから切り離してしまうことが難しい。逆に言えばこの映画を観た人なら誰でも、ある曲を聴けば映画の特定の場面が浮かび、映画の場面を観れば曲が浮かんでくるという関係になっているのだ。

 ナタリー・ウッドとリチャード・ベイマーの歌は吹替えだが、「トゥナイト」や「サムウェア」では歌と演奏の拍子が微妙にずれて、恋するふたりのはやる気持ちを表現しているようにも思う。(ズレすぎかもしれないけど。)

 ジェローム・ロビンスの振り付けたダンスは、映画独自のクローズアップや編集技術によって、舞台版より何倍もダイナミックになっているはずだ。特にダンス会場でジェット団とシャーク団がフロアを取り合う場面と、リフとベルナルドのナイフによる決闘、終盤に駐車場で踊る「クール」はすごい。「クール」では駐車場のセットに屋根を付けてカメラを低い位置にセットし、リフを殺されて怯えいらだつジェット団たちの今にも爆発しそうな気分が、狭い場所にギューギューと押し込められている様子を表現している。テレビやDVDで何度も観ているけれど、これは大画面で観るとより迫力がある。

(原題:WEST SIDE STORY)

2002年12月28日公開予定 ル・テアトル銀座
配給:シネカノン 協力:東京テアトル 宣伝・問い合せ:樂舎
(1961年|2時間31分|アメリカ)
ホームページ:http://www.cinemabox.com/westside/

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DVD:ウエスト・サイド物語
サントラCD:ウエスト・サイド物語
ノベライズ:ウエスト・サイド物語(角川文庫)
シナリオ:ウエスト・サイド物語
楽譜:ウエスト・サイド物語
関連CD:ウエスト・サイド・ストーリー(ブロードウェイ版)
関連CD:ウエスト・サイド・ストーリー(バーンスタイン指揮)

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