猟奇的な彼女

2002/11/06 アミューズピクチャーズ試写室
韓国で大ヒットしたラブコメディ。ハリウッドでリメイクとの話も。
ヒロインを演じたチョン・ジヒョンが素晴らしい。by K. Hattori

 昨年夏に韓国で大ヒットしたラブコメディ。その面白さはハリウッドの目にも止まり、日本映画をリメイクした『ザ・リング』の製作会社ドリームワークスがリメイク権を獲得したとのこと。タイトルの『猟奇的』というのは、SM嗜好の「猟奇趣味」があるとか、恋人を殺してバラバラにする「猟奇犯罪」を描いているということではなく、「奇抜な」とか「過激な」という意味らしい。

 洋の東西を問わず恋愛映画のひとつのパターンとして、主役男女の出会いを険悪なものにするという手法がある。最初はケンカしたりいがみ合ったりしている男女が、いくつかの事件を通して少しずつ相手の魅力を発見し、距離感が縮まっていく。その方が出会った途端に恋に落ちるよりは物語を作りやすい。恋が生まれ、育っていくプロセスを、すべて物語の中に盛り込めるからだろう。だが険悪な出会いにも程度というものがある。この映画に登場する男女の出会いは、出会いのパターンとしてはおよそ最悪のものと言えそうだ。

 大学生のキョヌは夜の地下鉄ホームで、自分好みの美女を発見。だが彼女はへべれけに酔っていて、電車の中で盛大に小間物屋を開く始末。そんな様子を遠巻きにながめていたキョヌは、他の乗客たちから彼女の恋人と間違われてこの大虎女を介抱しなければならない羽目になる。意識不明状態の彼女を背負い、ゲロまみれになりながらも、とりあえずは近くのホテルに連れ込んだ。相手は眠れる美女だが、ゲロのニオイがぷんぷんしているのだから色気もヘチマもない。ところが翌日になって意識を取り戻した彼女は、自分がホテルに連れ込まれたと知るやカンカンに怒り出す。いったいキョヌと彼女の関係はどうなる?

 この映画の面白さであり、物語にミステリアスな風味を付けて観客を引っ張っていくのは、チョン・ジヒョンが演じる「猟奇的な彼女」の魅力によるところが大きいと思う。このヒロインは一見すると言葉は乱暴で行動もハチャメチャなのだが、電車の中で老人に席を譲らない若者に悪態をついたり、居酒屋で女子高生を援交に誘う中年オヤジに怒鳴り散らしたり、なかなか筋の通った正義感の強さを見せてくれるのです。何かあると二言目には「ぶっ殺す!」とつぶやく彼女は、いったいなぜキョヌにつきまとうのか?

 映画は三幕仕立てで、主人公たちが知り合い交際を始める前半戦、ヒロインの家庭生活や秘められた過去が明らかになってくる後半戦、そして別れたふたりのその後を描いた延長戦で構成されている。前半はラブコメ、後半は悲恋もの、延長戦はSF。たっぷり笑わせ、先の読めない展開でハラハラドキドキさせ、クライマックスではホロリとさせて、最後はハッピーエンドで締めくくる。スマートさに欠ける部分も多いけれど、この多少泥臭い部分があればこそ、クライマックスのヒロインの叫びに涙してしまうのかもしれない。

(英題:MY SASSY GIRL)

2003年新春公開予定 シャンテシネ、シネマスクエアとうきゅう
配給:アミューズピクチャーズ
(2001年|2時間2分|韓国)
ホームページ:http://www.ryoukiteki.com/

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原作:猟奇的な彼女(キム・ホシク)
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