リーマン・ジョー!

2002/10/07 メディアボックス試写室
ティム・アレン扮する中年サラリーマンが不良社員への復讐を誓う!
主人公の優秀さをもう少し描き込んでほしかった。by K. Hattori

 大手製薬会社で勤続10年となるジョーは、社内でも影の薄い男だった。仕事の腕はいいし、人柄も人当たりも悪くない。でもどこか押しの弱いところがあって、それが彼を社内の便利屋さんにしてしまっている面がある。昇進の話が持ち上がっても、正式な辞令が降りないままだいぶたつ。要するにジョーは社内で軽く見られているのだ。それは私生活でも変わらない。妻は子供を連れて出ていき、今は週に1度だけ娘と会うぐらい。ところがその娘をたまたま会社に連れてきた日、ジョーは会社の駐車場で後輩社員と口論になり、相手から暴力を振るわれるというトラブルに出会う。娘の目の前で、何も抵抗することなく打ちのめされ、鼻血を出してぶっ倒れるという醜態。家に閉じこもったまま何日も会社を休むジョーのもとに、会社の保険担当者メグがやってくる。「あなたは何が望みなの?」という彼女の問いかけに、ジョーは目からうろこが落ちるような気がした。「僕はあの憎らしい後輩をぶちのめしたい!」。ジョーは復讐を誓うやいなや、社内での彼の人気は急上昇するのだが……。

 主演は『ギャラクシー・クエスト』のティム・アレン。今回はうだつの上がらない中年サラリーマンを演じているのだが、その登場シーンが絶品。いかにも平凡……というより、むしろ会社の順当な出世コースから外れたダメ男のニオイが、その歩き方から、その表情から、そのしゃべり方から、ぷんぷん臭ってくるようなリアリティがある。大きな会社なら、こういう社員がどこかの部署に必ずいるものです。あてがわれた仕事は、ぶつぶつ文句を言いながらもまず順当にこなす。仕事はそこそこできるけれど、積極性がないから自ら提案して何か仕事をするということがない。提案能力のない社員は、いくら真面目に働いていても出世はできない。便利に使われるだけなのだ。基本的に面倒見がよくて、女子社員からも気安く声をかけられる。家族の話になるとやたらと饒舌になるが、家庭生活自体はそれほど上手くいっているわけでもなさそうだ。僕が某大手企業に勤めていた時も、こんな人がいたなぁ……。

 このダメな中年サラリーマンが、「決闘だ!」「復讐だ!」と言った途端に社内の人気者になるというストーリー展開はちょっと理解に苦しむ。これは他の社員が主人公の男らしさを見直したと言うより、単に面白がっているだけなんじゃないの? このあたりは、もう少しエピソードに肉付けがほしかった。主人公が社内で目立たないながらも仕事のできる男だという描写も、もっとたっぷりと物語に仕込んでおいてほしい。でないと主人公はただ「決闘だ!」と叫んだだけで、社内でとんとん拍子に出世していったことになってしまう。もともと能力のあった男が、あるきっかけでその才能を周囲に認められたというベースができてないから、話が妙に浮ついてしまうのだ。これは残念。

(原題:JOE SOMEBODY)

2002年11月16日公開 銀座シネパトス
配給:20世紀フォックス
(2001年|1時間38分|アメリカ)

ホームページ:http://www.foxjapan.com/movies/joesomebody/

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