8人の女たち

2002/09/17 GAGA試写室
フランソワ・オゾン監督がフランスを代表する8人の女優たちを主演に、
ミュージカル映画風の可愛いミステリーを作った。by K. Hattori

 今年のベルリン映画祭で銀熊賞を受賞した、フランソワ・オゾン監督の最新作。日本では前作『まぼろし』が公開されたばかりで、『まぼろし』も十分に立派な風格を持つ作品だとは思うのだが、オゾン作品としてはこの『8人の女たち』の方が本領発揮だと思う。映画全編を包む、極上のユーモア、シャープな映像センス、ブラックでグロテスクな舌触り。それが黄金時代のハリウッド映画を意識したという、豪華絢爛な美術と衣装とメイクアップ、さらにタイトルにもなっている8人の女優たちの共演で楽しめるという趣向だ。

 雪に閉ざされ密室と化した邸宅で起きた、ひとつの殺人事件。屋敷に外部から侵入することも、屋敷から出ていくことも不可能。電話線は何者かに切断されて、外部との連絡も完全に絶たれている。殺されたのは屋敷の主人。残されたのは、被害者の妻と義母、それに長女と次女、被害者の実の妹、妻の妹(義妹)、メイドとハウスキーパー。犯人はこの8人の中の誰かに違いない。思いがけない犯罪に恐れおののいていた女たちは、やがて疑心暗鬼になっていく。そこで生まれるさまざまな葛藤、疑心暗鬼、秘密の暴露、そして和解。映画は最後に、あっと驚く事件の真相へとたどり着く。

 出演者の顔ぶれがとにかく豪華だ。義母がダニエル・ダリュー、妻がカトリーヌ・ドヌーヴ、ふたりの娘はヴィルジニー・ルドワイヤンとリュディヴィーヌ・サニエ、義妹がイザベラ・ユペール、実妹がファニー・アルダン、メイドがエマニュエル・ベアール、ハウスキーパーがフィルミーヌ・リシャール。これだけの顔ぶれが、よくぞ集まったものだと思う。

 この映画のもうひとつの趣向は、この作品がミュージカル仕立てになっていることだろう。8人の女優たちが、それぞれ1曲ずつ歌う。そして他の女優たちがコーラスを担当し、バックでダンスを踊る。映画の導入部でいきなりリュディヴィーヌ・サニエが歌い始めた段階で、僕はもう完全にメロメロ状態。こうやって登場人物たちが突然歌ったり踊ったりするという演出は『焼け石に水』でも1曲だけ見せてくれたけれど、今回の映画はそれが8曲! かわいい。チャーミング。素敵。キュート。そんな言葉をいくつ動員しても、この映画のちっちゃなちっちゃなミュージカルシーンの魅力は伝わりそうもない。曲が流れて、歌が入って、ちょっと踊って、ただそれだけのことなのに、観ていると体温が2度ぐらい上昇したかのような高揚感がある。

 各キャラクターのファッションやメイクにもそれぞれ趣向があって、観ていてじつに楽しい。話の内容なんてそっちのけ。謎解きなんてどうでもいい。その証拠に、この映画には被害者である一家の主人の顔が、ついに1度も登場しない。家の中で唯一の男性は、ついに一言も言葉を発しない。この映画は最初から最後まで『8人の女たち』のためだけに存在するのです。

(原題:8 FEMMES)

2003年正月公開 シネマライズ、銀座テアトルシネマ
配給・宣伝:ギャガ・コミュニケーションズGシネマグループ
(2002年|1時間51分|フランス)

ホームページ:http://www.gaga.ne.jp/8femmes/

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