9デイズ

2002/09/13 ブエナビスタ試写室
J・ブラッカイマーによる若手黒人俳優クリス・ロック売り出し作戦。
クリス・ロックは第2のウィル・スミスになれるか? by K. Hattori

 製作は『パール・ハーバー』や『ブラックホーク・ダウン』のジェリー・ブラッカイマーであるとか、監督が『バットマン』シリーズ3,4作目を撮ったジョエル・シュマッカーであるとか、主演が名優アンソニー・ホプキンスであるという話以前に、この映画の売りはクリス・ロックなのだと思う。『ベティー・サイズモア』で殺し屋コンビの若い方を演じていた黒人俳優。早口の甲高い声でまくし立てるコメディアン。数々の映画に脇役として出演しているけれど、これまで特別これといった当たり役がなかった若手黒人俳優の中堅どころ。それが今回、大型アクション映画の主演として大抜擢されたのだ。

 旧ソ連時代に開発されたポータブル型核爆弾(P.N.B.)が裏市場に流出した。CIAはこれを回収するため、おとり捜査でロシアマフィアの首領アドリク・ヴァスに近づく。だがP.N.B.を使った大規模テロを計画するドラガンのグループは、取引を阻止するため秘密工作員のマイケルを殺害する。取引のキーパーソンだったマイケルを欠いたCIAは、この計画を継続するため、マイケルの双子の弟ジェイクをにわか仕込みの工作員に仕立て上げようとするのだが……。

 CIAのエリート工作員マイケル・ターナーと、街のチンピラから工作員のピンチヒッターに大抜擢されるジェイクを一人二役で演じているのがクリス・ロック。秘密作戦の現場リーダーであり、ジェイクの教育係でもあるオークスにアンソニー・ホプキンス。ロシアマフィアの首魁ヴァス役にはピーター・ストーメア。これから大々的に売り出そうという若手俳優を、ベテランの俳優と監督でがっちりガードしようというプロデューサーの作戦だろう。
 
 この規模の作品としては、きわめて安上がりに作られている映画だと思う。海外ロケ先は、最近ハリウッド映画の誘致に熱心なチェコ。ここは「中世の面影を残す国」としてしばしば時代物(中世から第二次大戦頃まで)のロケに使われたりするのだが、今回の映画は現代劇だから、撮影場所は別にどこでもよかったはず。それがチェコになったのは、ロケ費用がきっと安いからなのでしょう。今回はそれに加えて、市街地での大規模なアクションシーンがほとんどない。敵の本拠地は廃墟になった古い修道院で、劇中最大のカーチェイスはだだっ広い畑(原っぱ?)の中を、ぐるぐる車が走り回るだけ。じつは映画のクライマックスに登場するニューヨークのグランドセントラルステーションもプラハでロケされていると言うから、やっぱりロケ費がべらぼうに安いのです。
 
 しかしこうしたコストダウンの手練手管は、映画を観終ってから「なるほどなぁ」と気づくもの。映画にはテンポがあって話をぐいぐい引っ張っていくので、観ている間はそれほど気にならない。主人公の女難に笑い、人物をシルエットで見せるホテルでの銃撃戦などもなかなか面白く観られました。

(原題:BAD COMPANY)

2002年10月中旬公開予定 丸の内ルーブル他・全国松竹東急系
配給:ブエナビスタ インターナショナル(ジャパン)
(2002年|1時間57分|アメリカ)

ホームページ:http://www.movies.co.jp/9days/

Amazon.co.jp アソシエイトDVD:9デイズ
サントラCD:9デイズ
関連DVD:ジョエル・シュマッカー監督
関連DVD:アンソニー・ホプキンス
関連DVD:クリス・ロック

ホームページ

ホームページへ