チェンジング・レーン

2002/08/22 UIP試写室
ベン・アフレックとサミュエル・L・ジャクソン主演のドラマ。
偶然出会った男同士が互いの人生を大きく左右する。by K. Hattori

 物語は大渋滞の高速道路で始まる。若手弁護士のギャビンは、福祉財団法人の多額な遺産管理問題で証拠書類を持って法廷に向かおうとしている。保険セールスマンのドイルは、裁判所で行なわれる離婚調停の場で、自分から離れていこうとする妻と子供をなんとか思いとどまらせようと考えながらハンドルを握る。だがそんなことを互いにまったく知らぬまま、ふたりの車は道路の真ん中で接触。先を急ぐギャビンは白紙の小切手をドイルに押しつけ、あっという間にその場から立ち去ってしまう。だが彼はこの時、自分の手から重要なファイルが道路に滑り落ちたことに気づかなかった。一方ドイルは代わりの車を拾って大急ぎで裁判所に向かうが、無情にも彼が不在なまま判事は離婚にゴーサインを出した後だった。ファイルを無くして途方に暮れるギャビンと、愛する家族をみすみす失ってしまったドイル。だがギャビンのファイルがドイルの手に残ったことで、この1日はふたりにとって忘れがたい日となるのだった……。

 若手弁護士のギャビンを演じるのはベン・アフレック。家族を失いかけたドイルを演じるのはサミュエル・L・ジャクソン。監督は『ノッティング・ヒルの恋人』のロジャー・ミッチェルだ。互いにのっぴきならない弱みを相手に握られた男同士が、相手を憎み、怨み、殺意を抱き、やがて許し合うまでを描く。

 すべてを失ったドイルが、再びアルコールに溺れて自分を見失ってしまうのではないかというサスペンス。さらには突然の破産宣告、ローンの解約、和解しかけた妻との間に生まれる致命的な亀裂……。一方重要な書類を紛失して刑務所行きのリスクを抱えたビャビンは、このトラブルをきっかけにして事務所内にある重大な不正に気づいてしまう。上司たちの横領。不倫の発覚。書類の捏造をせまる上司や妻たち……。物語のアイデアはなかなか面白い。この映画の面白さの90%は、次々に登場するこうしたアイデアの数々だろう。映画の流れがぎくしゃくするところも多いし、主人公たちの行動を裏打ちする動機付けが弱い部分も多々あるのだが、それらを「お話の面白さ」が十分に埋め合わせている。ドイルがバーでウィスキーを注文する一連のシーンや、ギャビンが妻に不正を説得されたり、ドイルに海岸で出会った女の子の話をする場面など、主演ふたりの大芝居が鼻につく場面すら、アクションに流れがちなドラマを一時堰き止めるアクセントにもなっている。

 主演ふたり以外にも、トニ・コレット、シドニー・ポラック、ウィリアム・ハートなど、存在感のある脇役が多い。しかし主人公のドイル以外は、あまり人間像を掘り下げていないのは残念。ギャビンですら妻との生活が見えてこないし、不倫相手との関係がまったく不透明なのだ。ドイルを破滅させるハッカーの男の結婚指輪と部屋に娘の写真が飾ってある様子を見せた細かさが、他のキャラクターにほしかった。

(原題:Changing Lanes)

2002年10月公開予定 日比谷映画他・全国東宝洋画系
配給:UIP
(2002年|1時間38分|アメリカ)

ホームページ:http://www.uipjapan.com/changing/

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