ジャスティス

2002/07/17 GAGA試写室
ブルース・ウィリスとコリン・ファレル主演の捕虜収容所もの。
捕虜たちの中にある人種偏見の行方。by K. Hattori

 第二次大戦中のドイツは極端な人種差別政策で、ユダヤ人、ジプシー、ポーランド人たちを大規模に殺戮していった。だが「人種差別政策」そのものは、この当時のドイツの専売特許というわけではない。ユダヤ人はドイツ以外のヨーロッパでも公然と差別・迫害されていたし、アメリカでは大っぴらに黒人への差別が行なわれ、カリフォルニアでは日系人を強制収容所に隔離した。

 第二次大戦末期、ドイツ軍の捕虜になったトーマス・W・ハート中尉は、捕虜収容所の中で起きた人種差別事件に巻き込まれる。白人だけの捕虜収容所に、撃墜された黒人パイロット2名が送り込まれてきたのだ。捕虜収容所も軍隊組織である以上、歴然とした階級による上下関係の規律が存在する。だが白人の下士官たちは、黒人士官に向かって公然と「ニガー」と言い放つ。言葉も通じないソ連軍捕虜には暖かい眼差しを注ぐ米兵たちが、同じアメリカ出身の黒人士官には蔑みの目しか向けられない。やがて同房の下士官の陰謀で、黒人士官のひとりが殺されるという事件が発生した。それからしばらく後、この陰謀の首謀者と思われる白人捕虜が、もうひとりの黒人士官に殺されるという事件が起きた。収容所を管理するドイツ軍士官は即刻容疑者を射殺しようとするが、捕虜のリーダーであるマクナマラ大佐は、犯人処罰のために軍法会議を開くよう要求し、容疑者の弁護人にハート中尉を指名する。

 主演はブルース・ウィリスとコリン・ファレル。監督は『真実の行方』『オーロラの彼方へ』のグレゴリー・ホブリット。軍法会議をテーマにした映画、捕虜収容所を舞台にした映画、アメリカの黒人差別をテーマにした映画はそれぞれ何本も何十本も作られていると思う。だが本作『ジャスティス』はこれらのテーマをすべてひとつにまとめ、1本の映画にしてしまった欲張りな作品だ。2時間5分という上映時間はやや長く感じられる。映画前半に主人公ハートが拷問され、その後この出来事がマクナマラの彼に対する不信感を生み出すという重要な複線があるのだが、これが映画の中ではあまり生かされていない。マクナマラは裏切り者を許さない。人間は弱い者だから、時には仲間を裏切ってしまうこともあるだろう。だがそんな自分の弱さを認められず、かたくなに裏切りを否定し続けるハート中尉をマクナマラは許せないのだ。ただしこのあたりは脚本でもあまりスッキリとまとめられておらず、それが映画終盤のもたつきを生み出しているようにも思えた。

 捕虜に対する拷問や捕虜の輸送など、映画前半に登場する描写は粘っこくて手にじっとりと汗をかくような迫力がある。だが中盤以降はこの粘りがなくなり、話がさらさらと先に流れていってしまうのだ。特に人種差別についての矛盾がドロドロと噴出してくるはずの裁判シーンに、まったく見応えがないのは怪訝ですらある。悪くはない映画だけれど、ちょっと物足りない。

(原題:Hart's War)

2002年秋公開予定 丸の内ルーブル他・全国松竹東急系
配給:ギャガ・ヒューマックス
(2001年|2時間5分|アメリカ)

ホームページ:http://www.justice-movie.com/

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原作洋書:Hart's War (John Katzenbach)
関連DVD:グレゴリー・ホブリット
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