TOKYO 10+01
TOKYO ELEVEN

2002/07/08 KSS試写室
参加者11名。賞金3億円をめがけて命がけの鬼ごっこが始まる。
映画序盤から中盤までのバカっぷりが楽しい。by K. Hattori

 劇場映画『うずまき』とビデオ映画『長い夢』で伊藤潤二の世界を映像化した、Higuchinsky監督の劇場映画最新作。今回は怪奇映画ではなく、コミカルでスピーディーなアクションドラマ。大金持ちの道楽で集められた“ワケあり”の男女11人が、高額の賞金目指して過酷なレースをするという『キャノンボール』や『ラットレース』系の話に、主人公たちの命を狙うハンターの存在と、制限時間内にゴールに到着できなければ命がないという『ニューヨーク1997』や『バトルロワイアル』系の話をドッキングさせている。

 物語の世界観をひしゃげて折れた東京タワーで象徴するビジュアルセンスや、ゲーム参加者11名のプロフィールを似顔絵とナレーションで一気に紹介してしまう導入部はテンポも良くて面白い。11人という登場人物の数はかなり多いのだが、それがわずか70分の映画の中でそれぞれ個性を発揮する。マンガチックで平板なキャラクターが多いとはいえ、人物の出し入れやエピソードの組み立ての手際がいい。ゲーム参加者の組み分けなど本来は必要と思われるエピソードも「観てりゃあとでわかるだろう」とばかりに省略してしまい、肝心の追いかけっこに一気に物語を引っ張っていく強引さも好ましいものだ。

 ゲーム主催者側の「K」という男もなかなかユニーク。この男に限らず登場人物たちの言葉やコスチュームや動作はかなり大げさに誇張され、一般的なリアリティとはまったく別の世界を作り出している。なぜか赤いランドセルを背負っている天才ハッカーのマイクロ。チャイナドレスの美女姉妹ウーロン&ジャスミン。気持ちが高揚するとタップを踊るカードマジシャンのエース。世界有数の贋作画家のはずなのに似顔絵ドヘタ(ヘタウマではなく本当にヘタヘタ)なフェイク。男殺しのキャバクラ嬢ココ。どのキャラもびんびん立ちまくっている。残念なのは物語全体を攪拌する謎の男スネークが、いまひとつインパクトに欠けること。この男が物語の中心になっていく映画の後半は、どうしても映画全体が小さくこじんまりと「過去の因縁話」にまとまってしまい、序盤から中盤にかけてもハチャメチャなエネルギーが感じられなくなってしまう。

 映画の最後にはこの「命をかけた鬼ごっこ」に隠された裏の狙いが暴露され、主人公スネーク(考えてみたらこの名前は『ニューヨーク1997』の主人公と同じだなぁ)とKの一騎打ちになる。最終的にはこういうところに落ち着いてしまうのだろうけれど、どうせならゲーム参加者をもう何人か最後まで生かして置いて、ハチャメチャな展開があとひとつかふたつラスト近くに突っ込まれていてもよかったように思う。フェイクがKの下手くそな似顔絵を描いて、そこにスネークがバラの花をぐさりと突き刺すとかね……。前半の破れかぶれな雰囲気が、映画の最後まで持続できなかったのは残念。

2002年8月3日公開予定 テアトル池袋(レイト)
配給:KSS
(2002年|1時間10分|日本)

ホームページ:http://www.kss-movie.com/tokyo-eleven/

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