アイス・エイジ

2002/06/14 20世紀フォックス試写室
マンモスとナマケモノとサーベルタイガーが人間の赤ん坊と旅をする。
氷河時代を舞台にしたCG長編アニメ映画。by K. Hattori

 予告編だけはずいぶん前から劇場や試写室で上映されていた、氷河期を舞台にした長編CGアニメーション映画。予告編ではリスのような動物がドングリを氷の中に埋めようとして氷河の崩落を招くシーンが使われていたが、これはそのまま映画の導入部に登場する。あのリスのような動物はスクラットと名付けられているそうだが、これは物語には直接関係しない脇役。ただしギャグメーカーとして時々物語の合間に顔を出し、観客をニッコリと笑わせてくれる。いつも生きるのに必死なスクラットは、この物語の背景となっている氷河時代を象徴するキャラクター。作り手のこのキャラに対する思い入れも大きいようで、声を担当しているのは監督自身だという。

 物語の舞台は氷河時代末期の北米大陸。そこは厚い氷河に覆われ、動物たちは季節の変化にあわせて温暖な地へと移動を繰り返していた。豊かだが厳しい自然環境の中で、もっとも非力な動物は人間だ。だが動物は集団で狩りを行い、当時地上最強の動物だったサーベルタイガーすらしばしばその獲物となった。サーベルタイガーのリーダーは、人間たちに復讐するため集落に生まれた赤ん坊をさらおうとする。だが人間の母親は我が子を連れて逃げ、マンモスのマニーとナマケモノのシドに子供を託して息絶える。ふたりは赤ん坊を人間たちに返してやろうとするのだが、そこに赤ん坊を奪うためサーベルタイガーの群から派遣されたディエゴがやってくる。彼は自分が赤ん坊を人間に返してやると言うのだが、マニーとシドは彼を信用せず、ディエゴを道案内に立てて自らの手で人間のもとに向かおうとするのだが……。

 映画の中では人間も動物も必死に生きている。人間は動物よりも偉いわけではなく、むしろ非力で下等な生き物として描かれている。何しろこの物語の中では、人間は言葉さえしゃべることができないのだ。マニーやシドにとって人間の赤ん坊を拾うというのは、現代の人間が捨て犬や捨て猫を拾ってくるのと大差ないことだろう。自分たちで赤ん坊を育てるわけにはいかない。ならばその非力な小動物は、群に戻してやらなければならない。行きがかり上、話はそういう具合になる。

 孤独な生活をしていた流れ者が赤ん坊を押しつけられ、それを正当な保護者のもとまで届けようとするが、その途中でいろいろな事件が起きて……という物語は昔からたくさん作られていると思う。『座頭市』シリーズにも似たような話があったっけ。この映画の中ではマニーとシドは最初から相性が悪いし、ディエゴに至っては何とかして赤ん坊を奪おうと(文字通り)虎視眈々と狙っている。それが旅の中で互いに信頼しあう仲間になるというバディムービーの要素もある。こうした要素が1時間22分というコンパクトな時間の中に、ギュッと詰め込まれているのだから、これはなかなか密度が濃いのです。

 CGの技術的にもかなりユニークなものだそうですが、観客にとってそれはどうでもいい話。最後のオチまで楽しませる、お話の面白さに感心させられました。

(原題:ICE AGE)

2002年8月3日公開予定 日劇3他・全国東宝洋画系
配給:20世紀フォックス
(2002年|1時間22分|アメリカ)

ホームページ:http://www.foxjapan.com/movies/iceage/

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