ぼのぼの
クモモの木のこと

2002/06/10 アミューズピクチャーズ試写室
いがらしみきおの人気コミックを原作者自らがCG映画化。
話がやたらとセンチメンタルすぎる。by K. Hattori

 いがらしみきおの人気コミック「ぼのぼの」を、原作者が自らが監修・脚本・絵コンテを担当して作った1時間強のCGアニメ。じつはこのコミック、今から9年前の'93年にもアニメ映画化されていて、その時はいがらしみきおが監督・原作・脚本をつとめたのだという。今回の監督は前作で監督補をつとめたクマガイコウキ。音楽は人気ギターデュオのゴンチチが担当している。原作は現在20冊以上の単行本が出ているそうだが、僕がこの原作を読んでいたのは最初の2,3冊まで。僕にとっていがらしみきおは、初期の「ネ暗トピア」などでアナーキーなギャグを連発していた過激な4コマ漫画家という印象が強い。「ぼのぼの」はその対極にあるようで、じつは根っこにアナーキーなところがあり、それが面白いと思っていた。僕が知らない間に、なんだかすっかり様変わりしてしまったようで、僕は今回の映画にひどく違和感を感じてしまった。これはちょっと恥ずかしい。

 映画に登場するキャラクターたちは全身がフワフワの毛に覆われていて、まるでヌイグルミみたい。まぁこれはヨシとしよう。しかし僕は今回の物語がダメ。森の中心にあるクモモの丘と、そこにたたずむフェレット(?)のポポくん、ならず者のそのお父さん、いつもポポ君を気づかうおばさんなどがドラマの中心になり、映画の最後は親子ものテーマで泣きが入るという構成。とにかく甘ったるくて甘ったるくて、ひたすら甘ったるくて甘ったるい展開は、映画を観ながらイスの上でとろけそうになってしまった。甘ったるい話が駄目なわけではないし、そもそも僕は「ぼのぼの」にハードな話など求めないけれど、それでも同じように甘ったるい話を描くにしたって、もうちょっと別の方法がありはしないだろうか。原作者自らが脚本・絵コンテを書いているのだから、「これが正真正銘の『ぼのぼの』なんです!」と言われてしまえばそれっきりなんだけど、僕はやっぱりこの甘々の展開に違和感を感じてしまうのです。

 最近はどうなんだか知らないけれど、もともと「ぼのぼの」は4コマ漫画の連作だから、次から次へといろいろなギャグが登場し、その連続の上に大きな物語が乗っかっている構成になる。でも今回の映画版は、どう考えてもギャグが少ない。少なすぎる。CG化されたキャラクターたちが「いや〜ん、かわい〜い!」と思えるのは登場した最初の1カットだけ。あとはギャグを入れていかないと、1時間と言えども時間が持たないよ。

 ゴンチチの音楽はちょっとうるさすぎた。最初から最後まで、ほぼべったりとアコースティックなウクレレの音が鳴り響くのだが、これはもっと音楽を抑制して、ここぞという時に音楽を入れた方が効果的だと思う。この音楽のせいで、物語の細かな起伏がすべて真っ平らに塗りつぶされてしまったような気がする。映画は最初から最後までやけに感傷的。原作の絵が持っているドライなタッチがCGで打ち消されたのに、それを補う何かがないから、全体がやたらウェットになってしまったのかな。

2002年8月上旬公開予定 新宿武蔵野館
配給:アミューズピクチャーズ
(2002年|1時間1分|日本)

ホームページ:http://www.bonobono.jp/

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サントラCD:made in Ukulele (ゴンチチ)
原作:ぼのぼの(いがらしみきお)

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