ル・ブレ(原題)

2002/06/05 東京日仏学院エスパスイマージュ
1等当選の宝くじを追って脱走囚とお人好しの看守がアフリカへ。
大観覧車を使ったアクションシーンは見もの。by K. Hattori

 ギャング団のボスとして暗黒街に君臨していたモルテスは、部下の中から警察への内通者が出て逮捕されてしまう。この際裏切り者には落とし前として死の制裁が加えられるが、殺された警察スパイの兄トルコは、弟を殺したモルテスへの復讐を誓った。それから7年。モルテスがお調子者の看守レジオに買わせた宝くじが、一等賞金1500万ユーロの大当たり。ところが当たりくじを持ったまま、レジオの女房は救護所を手伝うためアフリカのラリー会場に出かけてしまう。早く換金しないと賞金は水の泡。一方モルテスは姿を現さないレジオが、賞金を横取りするため逃げたと勘違い。刑務所を脱走してレジオのもとにやってくるが、事情を知ると彼と一緒にアフリカに飛ぶ。脱走したモルテスを追う警察。彼を弟の仇として付け狙うトルコも、後を追うようにアフリカに。こうして個性的な顔ぶれが集うドタバタ劇が始まる。

 フランスでは2週連続1位を記録したヒット作だというが、正直期待ほどには面白くない内容。これはおそらく、登場する人間たちの目的が全員異なるため、物語がひとつにまとまっていかないからだろう。レジオは女房を追い、モルテスは宝くじを追い、警察とトルコはモルテスを追う。これでは終盤になっても物語の方向がてんでばらばら。たまたま同じ場所に全員が勢揃いしても、顔を向けている方向が全員違うのだから、話はどこまでもすれ違いを続けてしまう。これは脚本にいろいろな要素を詰め込もうとして、結果としてまとまりに欠けてしまったのだと思う。数々のギャグもクスクス笑いにはなるのだが、それが積み重なったところで一気に爆笑させるようなパンチ力が不足している。

 監督は『パパラッチ』『シックスパック』のアラン・ベルベリアンと、核ジャックをテーマにしたドルフ・ラングレン主演の傑作B級アクション映画『ピースキーパー』を撮っているフレデリック・フォレスティアのふたり。もともと映画前半にある巨大観覧車のシーンだけを撮らせるつもりでフォレスティアを招いたそうだが、結果としては映画の中のかなりのアクションシーンを彼が演出することになったそうだ。ただし映画の中盤や後半に、この観覧車に匹敵する大がかりな見せ場がないのは問題。序盤であれだけのものを見せれば、普通は映画の後半にも別のアクションなりサスペンスなりが用意されていると思うけどなぁ……。

 モルテス役のジェラール・ランヴァンやレジお役のブノワ・ポールヴールド、トルコを演じたジョゼ・ガルシア、黒人刑事役のジーモン・ホウンソウはともかくとして、レジオの女房がロッシ・デ・パルマ(『アタメ』や『サム・サフィ』に出演している個性的な顔のスペイン女優)やというのは失敗だったと思う。情けない男がたいして美人でもない女房に入れ上げて……というおかしさを出したかったのだろうけれど、これはもっと魅力的なセクシー美女にした方が、話としてはずっと面白くなったと思う。気の抜けたサイダーみたいな映画でした。

(原題:LE BOULET)

2002年6月22日上映 フランス映画祭横浜2002
配給:
ギャガ・ヒューマックス共同配給
宣伝:ムービーアイ・エンタテインメント、ギャガ宣伝第2グループ
(2002年|1時間48分|フランス)

ホームページ:http://www.unifrance.jp/yokohama/

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