クライム&ダイヤモンド

2002/05/31 アミューズピクチャーズ試写室
殺し屋に捕まった男が語る飛び切りのストーリーとは?
映画ファン感涙必至の犯罪コメディ映画。by K. Hattori

 潜伏していたホテルの部屋から一歩外に出ようとした刹那、鼻先に銃を突きつけられて部屋に押し戻されたトレバー・フィンチ。相手は“毒舌ジム”の異名をとる名うての殺し屋だ。彼はマフィアに雇われ、フィンチを抹殺する心づもりだ。ジムはフィンチに言う。「クライアントから報酬が振込まれるまで90分。この間にお前が何か面白い話をしてくれたら命を助けてやってもいい」。フィンチはニヤリと笑って話し出す。「それならとっておきの話がある。宝石強盗、刑務所脱獄、それに女がからむ話さ」。映画通の殺し屋は身を乗り出しはじめる。「まるで映画みたいだな。物語の舞台はNY? それはロケが高くつきそうだ。今は“ある都市”ということにしておこう」。こうしてひとつのドラマが始まる。

 クリスチャン・スレイター、ティム・アレン、リチャード・ドレイファス、それにテレビ「アリー・myラブ」のポーシャ・デ・ロッシが出演する犯罪コメディ映画。自らの命を救うため、殺し屋にとびきり面白い話を披露することになる現代版シェーラザードの物語だが、その物語の中にはトリッキーな宝石強盗があり、刑務所からの脱獄があり、マフィアの陰謀があり、父と娘のドラマがあり、ロマンスがある。千夜一夜も物語を語らずとも、この短い物語の中に普通の映画にして3,4本分のアイデアが放り込まれている。それに加えて物語を面白くしているのは、物語の聞き手である殺し屋“毒舌ジム”のキャラクターだろう。ティム・アレン扮するこの人物は、たいそうな映画フリーク。しかも話す言葉の半分は映画の台詞の引用。「最近の映画はだめだ。古い映画こそが素晴らしい」と力説する彼は、初登場シーンで『ティファニーで朝食を』を観て泣いてるんだからまったく憎めない。この設定に加えてティム・アレンのキャラクターも加わり、映画が始まったときから彼がクリスチャン・スレイター扮するフィンチを殺さないのがわかってしまうのはちょっと玉に瑕かも。欲をいえば、この役はロバート・デ・ニーロのような、人のよさと残虐性を同時に演じられる役者のものだったと思う。ティム・アレンではお人好しすぎるんだよね。

 監督・脚本はクリス・バーヴェル。お話はとても面白いのだが、フィンチの語りをもうすこしファンタジックな色彩にしておけると、最後の最後まで作り話か実話かわからなくなり、最後にポロリと胸からダイヤがこぼれ落ちる効果が高まったと思う。撮影時点で色調を変えるとか、カメラアングルを工夫するとか、何かしらの方法はあったように思う。話にはひねりがあるのに、演出にひねりが欠けていたのは残念だ。しかしながらこの映画が観客、とくに熱心な映画ファンのハートをガッチリつかんでしまうのは確かだろう。ラストシーンで殺し屋がつぶやく映画の台詞や、有名映画(あえてタイトルは伏せる)からの引用に、僕は思わずホロリと来た。どうせなら曲はそのままでエンドロールを作ってほしかった。

(原題:Who Is Cletis Tout?)

2002年8月10日公開予定 シネマメディアージュ
配給:ギャガ・コミュニケーションズ
問い合せ:トライアル、ギャガ宣伝第3グループ

(2000年|1時間32分|アメリカ)

ホームページ:http://www.gaga.ne.jp/

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