セッション9

2002/05/13 アミューズピクチャーズ試写室
廃墟となった巨大精神病院で5人の男たちを襲う恐怖体験。
謎解きのためには2回観る必要があるかも。by K. Hattori

 僕自身は心霊現象の類にあまり興味がないけれど、世の中には「心霊スポット」と称する場所が数多く存在している。その多くは古い墓地や、朽ち果てた廃墟のような場所だ。実際に心霊現象が起きるかどうかはともかくとして、そうした場所がひどく薄気味悪いものであることは間違いない。マサチューセッツ州のダンバース精神病院跡地なども、そうした見るからに薄気味悪い場所のひとつだ。19世紀に建てられた巨大なゴシック風建築の病院は'84年に閉鎖されたが、かつては常に数千人の患者が収容されていたという。病院閉鎖から10数年たっても建物のそこかしこに残る、患者たちが生活した痕跡。ここではあらゆるショック療法やロボトミー療法などが行われ、多くの患者が病院から出ることなく命を落とした。病院の敷地内には、患者たちの墓地もある。ここは「廃墟」と「墓地」がワンセットになって、とびっきりの薄気味悪さが全体を包み込んでいる。

 この病院を改装するため、石綿除去業者の5人の男が建物に入り込む。社長のゴードンは通常2週間かかる作業を1週間で仕上げるという約束で、強引にごの仕事を受注したのだ。ゴードン以下、フィル、ハンク、マイクのベテランに新人ジェフを加えた作業員たちは、見事なチームワークでどんどん作業を片づけていく。だが長年一緒に仕事をしているフィルは、最近ゴードンの様子がおかしいことに気づいていた。彼は赤ん坊が生まれて以来、家庭生活がうまくいっていないようなのだ。一方フィルは女性の問題でハンクと仲違いをしており、作業中もふたりの間でもめ事が絶えない。マイクは作業をそつなくこなすものの、病院内で見つけた患者の診察テープやカルテに興味を惹かれている様子。そんなある日、作業中にハンクが突然姿を消すという出来事が起きる。

 監督は『ワンダーランド駅で』のブラッド・アンダーソン。今回はそれとはまったく違ったタッチのサイコサスペンス映画だ。出演は『マイ・ネーム・イズ・ジョー』のピーター・ミュランや、『プルーフ・オブ・ライフ』のデヴィッド・カルーソなど、演技は上手いけれど存在としては地味な顔ぶればかり。ところがこの地味さが、廃墟となった元精神病院が放つ禍々しいオーラと混じり合って、ドンヨリと濁った独特のテイストを生み出す。それぞれが表に出している顔とは別の何かを腹の中で考えているような、含みのある芝居をするのだ。

 この映画はキューブリックの『シャイニング』にもっとも影響を受けているようだ。人里離れた場所に建つ広大な建物と、少人数の登場人物たち。時間の流れは「月曜日」「火曜日」といったタイトルで示される。恐怖は目に見える心霊現象ではなく、閉鎖空間の中で徐々に精神のバランスを崩していく主人公たちの心理状態から生まれる。映画『シャイニング』を観て原作者のキングは心霊描写が少ないことに腹を立てたが、『セッション9』はいわば、完全に心霊現象を抜き去った『シャイニング』と解釈することもできるだろう。

(原題:SESSION 9)

2002年6月公開予定 シネマスクエアとうきゅう
配給:アミューズピクチャーズ映画配給部

(上映時間:1時間40分)

ホームページ:http://www.amuse-pictures.com/session9/

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