ガウディ アフタヌーン

2002/05/09 メディアボックス試写室
ガウディの町バルセロナを部隊にしたミステリー・コメディ。
出演者の顔ぶれが豪華。ガウディの建築も見事。by K. Hattori

 母親に反抗して18歳で家を飛び出して以来、世界中を転々と放浪する自称・住所不定の作家カサンドラ。彼女は今ガウディの町バルセロナで、得意の語学力を生かし翻訳家の仕事をしている。だが今回は引き受けた仕事が「母娘もの」のラテン文学。母娘関係が最悪だったカサンドラにはひどく苦手な分野とあって、翻訳作業は半ばにして暗礁に乗り上げてしまった。そんな時、彼女のもとにアメリカからひとりの女がやってくる。行方不明になった夫を捜すため、彼女に通訳の手伝いをしてほしいというのだ。アパート代も払えなくなっているカサンドラは高額の報酬に目がくらみ、慣れない探偵もどきの仕事を受けることにしたのだが……。

 原作はバーバラ・ウィルソンの同名小説。監督は『マドンナのスーザンを探して』のスーザン・シデルマン。主人公カサンドラを演じるのはジュディ・デイヴィス。謎めいた依頼人フランキーを演じるのは、オスカー女優のマーシャ・ゲイ・ハーデン。さらにリリ・テイラー、ジュリエット・ルイスなどが出演する、女優陣の顔ぶれがじつに豪華なミステリー・コメディなのだ。撮影はほとんどがバルセロナで実際にロケされているそうで、バルセロナ名物のガウディ建築が映画の随所に登場するのが見もの。グエル公演、カサ・ミラ、カサ・バトリョ、サグラダ・ファミリア、グエル邸、コロニア・グエル教会など、世界遺産に登録されているようなガウディ建築を使って実際にロケ撮影されてるのだから贅沢きわまりない。フランキーの夫ベンが暮らすアパートは、外観がカサ・ミラで内装がカサ・バトリョ、屋上がグエル邸になっているのだそうで、まぁ無茶苦茶と言えばそれまでだけど、これはこうした映画の嘘を使って一気にガウディ建築を紹介してしまおうという、映画製作側の観客に対するサービス精神です。この映画を観ていると、バルセロナに観光に出かけたくなります。

 原作では主人公カサンドラがレズビアンという設定のようですが(原作は未読)、映画では明らかにストレートの女性として描かれています。ただし男っ気はゼロ。少女時代に「家族」というものから逃避して世界を放浪し続けてきた中年シングル女性が、フランキーの依頼から摩訶不思議な家族の姿にぶつかって、自分自身の家族観、特に母親観を問い直していくという筋立てです。映画の中にはいろいろな母親が登場する。子供を取り戻そうとするフランキー。母親の地位を奪われまいとするベン。カサンドラのアパートの大家で3人の子持ちのカルメン。小説の中に登場する醜く太った母親。そしてカサンドラ自身の母親。この映画はもの凄くユニークな「母娘もの」テーマの映画なのです。背景となるガウディの建築が作り出す緩やかなカーブは、人間に母親の胎内にいるような居心地のよさを感じさせます。

 ジュディ・デイヴィスがヒロインのカサンドラを好演。カサンドラを主人公にした原作はシリーズ化されているので、映画もぜひシリーズ化していただきたい!

(原題:GAUDI AFTERNOON)

2002年6月公開予定 テアトル・タイムズスクエア
配給:東芝デジタルフロンティア 宣伝:LIBERO

(上映時間:1時間37分)

ホームページ:http://www.tdf.toshiba.co.jp/tdf/

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原作:ガウディ・アフタヌーン
原作洋書:Gaudi Afternoon: A Cassandra Reilly Mystery
関連DVD:スーザン・シーデルマン
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