ブレイド2

2002/05/08 日本ヘラルド映画試写室
ウェズリー・スナイプス主演の異色吸血鬼アクション映画パート2。
『ミミック』の監督が独特の美意識で映画を埋め尽くす。by K. Hattori

 人間と吸血鬼の両方から血を受け継いだハーフ・ヴァンパイアのブレイドは、呪われた吸血鬼の系譜をこの地上から抹殺すべく夜の闇を駆け抜ける。吸血鬼特有の並はずれた運動能力を持ちながら、吸血鬼の弱点である日光に悩まされることのない彼を、吸血鬼たちはデイ・ウォーカーと呼んで恐れた。だがそんなブレイドに、敵である吸血鬼から親書が届けられる。ブレイドが知らないところで人間を吸血鬼に変身させる吸血ウィルスが突然変異し、リーパーズという新種の吸血鬼が現れて増殖しているのだという。リーパーズは今のところ吸血鬼をターゲットに活動しているが、このままでは遠からず人間たちをも餌食にするようになるだろう。ひとまずブレイドと吸血鬼軍団の戦いは休戦し、一緒にリーパーズ相手の共同戦線を張ろうというのだ。ブレイドはこの申し出を受け入れ、吸血鬼たちによる特殊部隊を率いて、リーバースへの戦いを挑むのだが……。

 前作はヴァンパイアハンター映画にチャンバラを合体させた、設定こそ暗いが中身はからりと明るく脳天気なB級アクション映画だった。だが続編である本作では作品のテイストが一変。主人公ブレイドに仲間が増えたことで賑やかさは増したのだが、映画のテイストはひたすらジメジメと湿っぽいダークでグロテスクなホラー・アクションになった。監督は異色のヴァンパイア映画『クロノス』で注目され、ハリウッドで『ミミック』という悪夢のような巨大ゴキブリ映画を作ったギレルモ・デル・トロ。今回の映画は吸血鬼ストーリーの部分で『クロノス』の耽美的なテイストを盛り込み、闇にうごめくリーパーズの描写では『ミミック』のグロテスク描写を引き継いでいる。吸血鬼狩りのシーンは前作『ブレイド』でもかなり暴力的でグロテスクだったけれど、今回の映画はそれに輪をかけてグロテスクだ。

 デル・トロ監督は独特の美意識を持っている監督で、今回の映画でもそんな監督の気配りが画面の隅々にまで行き届いている。映画作品としての格としては、前作『ブレイド』より今回の映画の方が数段上だろう。映画には気品や風格のようなものさえ漂っている。だがこうした完成度の高さと、グチャグチャドロドロの生理的嫌悪とが同居しているのがこの映画の特徴。これはデル・トロ監督の作品に共通することでもあるけれど、この映画ではその規模がでかいだけに、映画の持つ気品や風格も、グロテスクで不快な嫌悪感も、共にひときわ高いレベルに達しているように思う。

 映画から受ける迫力やボリューム感に比べると、脚本のできはあまりよくないと思う。前作とのつなぎになる導入部も取って付けたようだし、エピローグもあまり面白くない。でもこうした脚本の弱さを、デル・トロ監督流の美学で徹底的に肉付けしているため、映画を観ている時は特に不満も不足も感じないと思う。

 それにしてもリーパーズのあのデザインは、やっぱり悪夢だなぁ。食後に観ると消化不良を起こしそうです。

(原題:BLADE II)

2002年6月公開予定 ニュー東宝シネマ他・全国東宝洋画系
配給:日本ヘラルド映画

(上映時間:1時間58分)

ホームページ:http://www.blade2.jp/

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