ゴースト・オブ・マーズ

2002/04/26 SPE試写室
ジョン・カーペンター監督の最新作はいつものカーペンター節全開!
遠慮会釈のない過激なB級魂に胸がスカッとする。by K. Hattori

 芸能の世界には「この人だから許される」という、芸の境地がある。他人が同じことをしても「紋切り型だ」「新鮮味がない」「マンネリだ」「B級だ」「古くさい」とさんざんな罵声を浴びそうな芸も、ある人が演じてみせると一味も二味も違って見えてくる。ジョン・カーペンター監督は、現在その境地に向かってまっしぐらに突き進んでいるようにも見える。常にB級一直線。SF、ホラー、バイオレンス、アクションなどのジャンルを縦横無尽に横断しながら、十年一日のごとくいつも同じカーペンター節を熱唱する熱いオヤジ。当然今回の映画も、カーペンター節全開で吼えまくるのだ。B級で結構。マンネリが悪いか。古くさくてもそれがどうした。カーペンターにはそれらがすべて許される!

 物語の舞台は22世紀の火星。何度目かの殺人容疑で逮捕された凶悪犯ウィリアムズを逮捕するため、鉱山町シャイニング・キャニオンを訪れた警官隊は、町中の至る所で無惨な殺され方をした人間の遺体を発見する。犯人はウィリアムズか? だが彼は刑務所の中だ。では誰が? やがて隊員のひとりが、鉱山に集合して奇声を上げる醜悪な一群を発見する。手に手に武器を持ち、出会う人間を片っ端から惨殺していくその連中こそ、町を全滅させた犯人に他ならなかった。それはほんの少し前、町を埋め尽くした赤いガス状の物質に包まれた人間のなれの果て。ガスは遠く離れた古代火星人の遺跡から解き放たれたもので、そのガスに包まれた人は肉体と精神を火星人に乗っ取られ、侵略者である地球人を皆殺しにするため戦いを開始するのだった……。

 物語の大筋は『遊星からの物体X』の火星版といったところ。そこに『ニューヨーク1997』にあった、警察に協力する犯罪者という設定をからめている。要するにカーペンター監督のファンにとっては、いつもと同じお馴染みの世界だ。主演は『スピーシーズ』の美女エイリアン役で知られるナターシャ・ヘンストリッジと、『アナコンダ』『スリー・キングス』のアイス・キューブ。他にも『ジャッキー・ブラウン』のパム・グリアや、『パラサイト』のクレア・デュバル、『スナッチ』のジェイソン・ステイサムなど、顔ぶれは意外なほどゴージャス。この顔ぶれのおかげで、思い切りB級のこの映画が安っぽくならずに済んでいる。

 映画の見どころは、映画中盤から後半にかけて延々続く集団殺戮ショーだ。火星人に意識を乗っ取られたゾンビ軍団は、人間たちをひとり残らず根絶やしにしようと襲いかかる。人間たちはイナゴの群のようにあたりを埋め尽くすゾンビ軍団を、殺して殺して殺しまくって生存に向けての血路を開く。要するにこれは、大昔の西部劇にあったインディアンと騎兵隊の戦いです。設定はよく似ていても、『物体X』は犯人探しの密室ミステリーと侵略SFの融合。『ゴースト・オブ・マーズ』は西部劇(しかも残酷描写バリバリのマカロニ調)と侵略SFの融合だ。いやいや、堪能しました。面白かったです。

(原題:JOHN CARPENTER'S GHOST OF MARS)

2002年夏公開 シブヤ・シネマ・ソサエティ、ヨコハマ・シネマ・ソサエティ
配給・宣伝:メディアボックス

(上映時間:1時間38分)

ホームページ:http://www.scs-voice.com/

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