ルーヴルの怪人

2002/03/06 メディアボックス試写室
夜のルーブル美術館を徘徊する黒マントの怪人の正体は?
ソフィー・マルソー主演のミステリアス・ロマン。by K. Hattori

 パリのルーブル美術館は、収蔵品の質と量、さらには知名度において、右に出るもののない世界有数のミュージアム。20年近くに及んだ大規模な改修工事が'99年に終わったばかりだが、じつはその改修工事の際、地下収蔵庫から古代エジプト時代のミイラが発見されたことはあまり知られていない。石棺の名前が削られた謎のミイラは、1935年に考古学者デフォンテーヌ教授が発掘したものだが、フランスへの輸送途中で関係者たちが次々と謎の自殺を遂げるという事件を起こしたことから、呪われたミイラとして地下深くに封印されていたのだ。65年ぶりに発見されたミイラはその分野の権威であるグレンダ・スペンサー博士の手で分析されることになるが、それ以来、ルーブルでは次々と謎めいた事件が起き始める。閉館後の無人の展示室を、夜な夜な黒ずくめの怪人が歩き回り、古代エジプト時代の装飾品類を盗み出していくのだ。美術館側は警備を強化するが、今度は警備員たちの謎の事故死や自殺が相次ぐようになる。

 ソフィー・マルソー主演のミステリアスな怪奇映画だが、怪人の正体が「ミイラの霊」というのが少し興ざめ。ミイラ男が大暴れする『ハムナプトラ』シリーズがハリウッドで作られているのに、夜の美術館をミイラの霊にとりつかれた人間がうろつくぐらいで恐がれるわけがない。一応は最新のCGを使ったりして映像的には工夫を凝らしているのだが、根本がやはり「ミイラの霊」では現代の観客に対する訴求力が弱くないだろうか。しかも『ハムナプトラ』と違って、この映画のミイラ人間は美術館の中をウロウロするだけ。しかも「ミイラ人間」はミイラに取り憑かれているだけで、中身はチャーミングなソフィー・マルソーであることを誰もがわかっている。

 ストーリーの原型はルーブル美術館にまつわる一連の怪奇譚、都市伝説の類らしい。それを20世紀の初頭にアルチュール・ベルネッドが大衆紙向けの連載小説として集大成し、1926年にはサイレント映画化されて大ヒット。'65年にはテレビ向けのミニシリーズが作られ、これは日本でも「ベルフェゴールは誰だ?」というタイトルで放送されたという。今回の映画はこうした先行作品を土台にしつつ、ルーブルの改修工事という最近の出来事を物語に持ち込み、さらに最新の特殊撮影やVFX技術を加えたエンターテインメントを目指している。物語の大半を、ルーブル美術館の内部で長期ロケ撮影しているというのも、ひょっとしたら見どころのひとつなのか。しかしこの映画、脚本にもうちょっと工夫がほしい。ルーブルでの長期ロケが可能になったなら、それに徹底してこだわって、いっそのこと物語がすべてルーブル美術館内部で進行するような展開にするとか……。

 監督はジャン=ポール・サロメ。脚本は『王妃マルゴ』『パパラッチ』のダニエル・トンプソンと、『プロヴァンス物語/マルセルの夏・マルセルのお城』『愛を弾く女』のジェローム・トネールの共同。VFXは『アメリ』も手がけているアラン・カルスだ。

(原題:BELPHEGOR, Le Fantome du Louvre)

2002年初夏公開予定 全国松竹東急系
配給:日活

(上映時間:1時間37分)

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