ミモラ
心のままに

2002/01/25 GAGA試写室
恋人への思いを断ち切れぬまま結婚してしまったヒロインは……。
アイシュワリヤー・ラーイ主演のインド映画。by K. Hattori

 一時期のブームは落ち着いたものの、日本でも根強いファンを生んだインド・ミュージカル映画。本作は『ザ・デュオ』『ジーンズ/世界は2人のために』のアイシュワリヤー・ラーイ主演のラブストーリー。上映時間3時間7分。もちろん歌あり踊りありのミュージカルだ。どうやらこの映画は海外配給を前提に編集されたものらしく、オープニングのタイトルもすべて英語表記になっているし、インド映画に必ずある「休憩タイム」も存在しない。『ムトゥ/踊るマハラジャ』で日本人を仰天させた泥臭さはすっかり消えていて、この映画はすっかり世界品質のエンターテインメント作品になっている。ただしお話の方はかなり古風なメロドラマで、そのあたりはまだまだ時代がかっている感じはするけれど。

 インドの有名音楽家の娘ナンディニは、父に弟子入りするためイタリアからやってきた青年サミルと恋に落ちる。だがサミルが彼女に結婚を申し込む前に、彼女を見そめた青年弁護士ヴァンラジが親を通じてナンディニとの結婚話を進める。サミルがようやく彼女に愛を告白した頃、ナンディニがヴァンラジに嫁ぐことはすっかり決まっていた。サミルと結婚したいと言うナンディニを、父親は家の恥だとなじる。サミルは家から追放されてイタリアに帰国。魂の抜け殻のようになったナンディニは、そのままヴァンラジと結婚してしまったのだが……。

 話そのものは、特別面白いとは思わなかった。映画の前半がインド国内編、後半がイタリア編になっているのは、この手の映画によくあるパターンで珍しくもない。僕が圧倒されたのは、インド映画のスタジオが、じつに贅沢に作られていることだった。ミュージカル・シーンのほとんどはスタジオで撮られているが、大道具や小道具の圧倒的な物量にはビックリ。撮影はほとんどボンベイ(ムンバイ)のフィルム・シティで行われているそうだが、スケールの大きなオープンセットがいくつも出てきてため息が出そうになる。スタジオ撮影の利点を生かして、ミュージカル・シーンのカメラの移動やカット割りも自由自在。ダンサーたちが踊る石畳が下からライトアップされたときは驚いた。プレス資料によると、この演出はインドの映画関係者たちの間でも話題になったという。確かに面白い。これはアイデア賞だった。

 自分の付き合っている青年との結婚を反対されたヒロインが、意に添わぬまま親に結婚を命じられる。これで結婚相手がいけ好かない奴なら、最後にヒロインが恋人のもとに走ってめでたしめでたし。ところがこの映画では、その結婚相手というのもいい人で、心の底からヒロインを愛している。ヒロインはそんな夫の愛に気づき、さてどうするか?というのがお話のポイント。結論としてはまずまず妥当なところに落ち着いたと思うけれど、僕としてはあまり釈然としないなぁ。これは観客によって賛否両論だと思う。もう少しエピソードを足すと、ヒロインの選択にも観客席満場一致の納得が得られたか。でもそうすると、結論が先にバレてしまうしなぁ……。

(原題:HUM DIL DE CHUKE SANAM)

2002年GW公開予定 有楽町スバル座・他
配給:ギャガ、ヒューマックス 宣伝:ポップ・プロモーション、ギャガ

(上映時間:3時間7分)

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