Laundry
[ランドリー]

2002/01/10 映画美学校第2試写室
コインランドリーで出会った無垢な青年と傷心の若い女。
窪塚洋介と小雪主演のピュアなラブストーリー。by K. Hattori

 映画『GO』でキネマ旬報の主演男優賞を受賞することが決まった窪塚洋介が主演した、ファンタジーの香りがするピュアなラブストーリー。共演は小雪と内藤剛志。テレビの世界で活躍し、これが映画監督デビュー作となる森淳一が脚本と原作も担当している。サンダンス・NHK国際映像作家賞日本部門2000を受賞した脚本を、自ら映画化したものだ。製作会社は『踊る大捜査線 THE MOVIE』『Juvenile』『サトラレTRIBUTE to a SAD GENIUS』など、近年良質のエンターテインメント作品を作っているROBOT。2時間6分と上映時間は長いものの、登場人物は少なく、話の規模も小さな低予算の映画だろう。それでいて胸の奥にずしんと響く、大きな感動を与えてくれる作品に仕上がっている。ラストシーン近くで、僕は不覚にも涙がこぼれそうになりました。

 主人公テルは子供の頃のケガがもとで、二十歳になっても子供のような精神を持ったままの青年だ。彼は祖母の経営するコインランドリーで、洗濯物が盗まれないように見張る仕事をしている。ある日、乾燥機の中に置き忘れてあった服がきっかけで、テルは水絵という若い女と知り合う。だがそのすぐあと水絵はコンランドリーの乾燥機に1着の服を残したまま、故郷の町に戻ってしまう。テルはその服を彼女に返すため、ヒッチハイクをしながら遠い町に向かうのだが……。

 ラブストーリーといっても、この映画にはキスシーンもなければベッドシーンもない。男に騙されて傷ついた水絵は一種の男性恐怖症になっているし、テルには女性に対する性的な欲求がない。テルの水絵に対する愛は、幼稚園児が「大きくなったら○○ちゃんと結婚するんだもん!」と宣言するような無邪気な愛だ。人間は生きていればさまざまな雑事に追われ、生活の中身は清濁さまざまな要素にあふれている。しかしテルの生き方は、生活の中からすべての澱を落とし、清く澄んだ上澄みだけを取り出したように透明で純粋なのだ。それは「エロス」ではなく、神の愛「アガペ」に近い。

 映画の中には、お気に入りの銀のカップで水を飲む少年の話が出てくる。僕はこのエピソードを、映画『フィッシャー・キング』にも登場する聖杯伝説のバリエーションとして解釈した。テルは伝説に登場する聖愚者なのだ。彼は一切の世俗的欲望を持たないがゆえに、出会った人々を癒す力を授けられる。社会的な弱者に見えるテルは、じつは強い人間なのだ。男に振られた程度で生活ががたがたになってしまう水絵の方が、むしろ弱くて脆い。もっともこの弱さも、映画の中では水絵の純粋さとして描かれる。そんな水絵はテルの存在によって癒され、鳩を飼う謎の中年男サリーも、テルとの出会いによって人生の新たなスタートを切る。

 小動物を思わせる窪塚洋介の目が最高。時折手で頭をがりがりとひっかく仕草は、まるでハム太郎。純真無垢なテルという役に説得力がないとこの作品は台無しだと思うが、窪塚洋介はお見事だった。感動しました。

2002年春公開予定 シネ・アミューズ
配給:ROBOT 配給協力・宣伝:ザナドゥー

(上映時間:2時間6分)

ホームページ:http://laundry.robot.co.jp/

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