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2001/12/17 映画美学校第2試写室
低視聴率で打ち切りが決まった連続ドラマに帳尻を合わせる方法は?
ドラマ制作の裏側を描くシチュエーション・コメディ。by K. Hattori

 東京都知事がキャバクラ嬢と恋に落ちるという連続テレビドラマ「ハートVIPへ、ようこそ」は、放送開始以来の視聴率低下に悩まされ続けていた。放送7回目で視聴率はついに5%を切り、番組はとうとう第9回目の放送で打ち切りが決定してしまう。第9回目は既に半分ほどの撮影が終わっている。テレビ局のリハーサル室に集まった関係者たちは、番組の残り半分でいかに物語の幕を引くかに頭を悩ませる。テレビ局側のプロデューサー、制作会社のプロデューサー、そのアシスタント、脚本家、監督、脇役の役者、主演女優のマネージャーなどは、それぞれの思惑をぶつけ合いながら、最終回の段取りを決めていこうとするのだが……。

 主人公は製作会社のプロデューサー大場鉄郎。肩書きは立派だが、テレビ局にやってくれば局の下請けという弱い立場に甘んじてしまう彼の立場を通して、テレビドラマ制作の裏側を描いていくシチュエーション・コメディだ。本作のエグゼクティブプロデューサーであり、主人公の大場鉄郎を演じているのは鶴見辰吾。その妻である脚本家・中原夏生を演じるのは杉田かおる。このコンビは「3年B組金八先生」のコンビで、映画の中にもそれを引用した台詞が出てきて笑わせる。局のプロデューサー橋本を演じているのは石原良純。都知事の息子が、都知事が主人公のドラマを作っているわけだ。ただしそれをネタにしたギャグがないのは残念。アシスタントプロデューサーを演じるのは田中要次。物語に常にからむ狂言回し風の謎の男・子牛田を演じるのは船越英一郎。舞台となるのはテレビ局のリハーサル室が中心で、そこに劇中劇として撮影されたテレビドラマの様子や回想シーンが挿入されるという構成だ。

 密室の中でそれぞれ立場の違う大人たちが、ひとつの問題についてああでもないこうでもないと議論する様子は『12人の優しい日本人』にも似ている。モチーフになっているのはテレビドラマ制作の内幕だから、殺人事件の裁判よりは誰にとっても身近で親しみやすい素材。しかしこの映画、ど〜も面白くない。作り手側の狙いはわかるような気がするが、それがうまく表現と噛み合っていないのではなかろうか。僕が一番気になったのは、「記憶に残る最終回を作ろう!」と意気込んでいる割には、最終的に完成したドラマが平凡すぎること。登場人物がそれぞれAプラン、Bプラン、Cプランを出して説明し、その後ある事件が起きて「やっぱりBプランで行こう」というのは話の流れとしてはわかる。しかしこの流れで行くなら、最初の段階で提示されたBプランが、その場に参加している人たちからは陳腐で場違いなものに見える必要がある。早々に捨てられてしまった陳腐で場違いなラストシーンが、その後、ある事件の発生によって光り輝き始めるのではなかろうか。その結果、最終的にはBプランを越えたB’なりDなりのプランが生まれてほしかった。この映画だと「いいよね、Bプランでも」という消極的な選択にしか見えないよ。

2002年3月9日公開予定 中野武蔵野ホール
配給:フラミンゴ・ビュー・カンパニー 宣伝:る・ひまわり

(上映時間:1時間53分)

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