ロード・キラー

2001/11/30 ニュー東宝シネマ
CB無線でからかったトラック運転手が逆上して襲いかかる。
『激突!』を青春ホラーに翻案したような映画。by K. Hattori

 ボストンの大学に通うルイスは、コロラドの大学から帰省する幼馴染みヴェナを誘って、故郷ネブラスカの町までドライブしようと考える。おんぼろ車を買い込み、いざ憧れの彼女のもとに出発。途中ソルトレイクシティの刑務所に放浪癖のある兄フラーが入っていると知ると、ルイスは身元引受人として兄を釈放させる。ヴェナに逢えるのはまだ少し先になる。それまでは兄弟ふたりの長いドライブだ。フラーは暇つぶしにCBラジオを格安で買い込み、ルイスに女の声色を使わせてトラックの運転手をからかいはじめる。それはCBを使ったことのある人なら誰もが考えつく、些細なイタズラに過ぎない。調子に乗ったふたりは、モーテルで出会った隣室の客にこのトラック運転手を差し向けようと画策する。だがふたりは翌朝警官から、隣室の客がアゴを切り取られた無惨な姿で発見されたことを知らされる。ふたりがからかっていたトラックの運転手は、かなり凶暴で冗談の通じない相手だったらしい。兄弟ふたりの気ままなドライブは、危険なトラック運転手に怯える恐怖の旅になってしまう。

 スピルバーグの『激突!』と同じ「大型トラックに追い回される恐怖」に、少年少女たちの甘酸っぱい恋愛感情をからめ、今どきの青春ホラー映画にしたような作品。同時にこれは性格の違う男ふたりが絆を深めていくバディムービーであり、おんぼろ車で大陸を横断するロードムービーでもある。主人公ルイスを演じるのは『ワイルド・スピード』のポール・ウォーカー。その兄フラーを演じているのはスティーブ・ザーン。ガールフレンドのヴェナを演じるのは、すくすくと健やかに成長しすぎ気味のリリー・ソビエスキー。監督は『アンフォゲッタブル』『ラウンダーズ』のジョン・ダール。

 映画は恐怖描写の定番演出で埋め尽くされていて、新しさがまったく感じられない。僕はむしろそれを楽しんでいたので、この映画にはそこそこ満足できた。出し抜けに何か事件が起きるびっくり箱的なショック描写は少なく、すべての出来事は起きるべくして起きる。ショック描写の前にはすべて前触れがあり、心臓が止まりそうな衝撃を受けることはあり得ない。いわばこの映画は、遊園地のお化け屋敷の恐怖。お客さんが恐怖ですくみ上がり、通路でしゃがみ込んだり失神してしまうことは避けるようにできている。「わ〜」とか「きゃ〜」とか叫びながらも、お客さんが入口から出口まで一定速度で歩き続けられなければお化け屋敷は成立しないのだ。観客を恐がらせる仕掛けは、どれも観客が次のショックにそなえて身構えているときに起きる。

 映画はこうした「そこそこ恐いレベル」を最初から目指しているのだと思う。その上で主演の俳優3人をどう見せるかということなんだろう。しかし残念ながら僕は、ポール・ウォーカーという俳優にまったく何の魅力も感じられない。リリー・ソビエスキーももうダメ。唯一の面白さは、兄フラーを演じたスティーブ・ザーンぐらいかな。役者が弱いことで大味になっている映画だ。

(原題:JOY RIDE)

2001年11月23日より公開 ニュー東宝シネマ他・全国東宝洋画系
配給:20世紀フォックス

(上映時間:1時間37分)

ホームページ:http://www.foxjapan.com/movies/roadkiller/

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