助太刀屋助六

2001/11/04 シアターコクーン
岡本喜八監督の新作は真田広之主演の時代劇。
ヤクザ青年が父親の仇討ちに狂奔する。by K. Hattori

 岡本喜八監督の新作は、かつて自身でテレビ時代劇として作演出した「助太刀屋助六」('69年)の映画版リメイク。テレビ版は「仇討ち」をテーマにした1話完結・全26話の連作シリーズで、「助太刀屋助六」はその第19話。主演はジェリー藤尾だったとか(僕は当然未見)。テレビは正味46分だったものを、今回の映画では1時間28分に膨らませている。主演は『EAST MEETS WEST』に続いて真田広之。寂れた宿場町のセットがじつに見事だと思ったら、これは映画『座頭市』('89年)のために作ったセットをそのまま流用したのだという。

 父を知らずに上州の片田舎に育った助六は、母親が死んだ後にぷいと故郷を捨てて旅に出る。その日暮らしのやくざな生活の中で助六が身につけたのは、仇討ちに出くわすたびにその助太刀をするという稼業。義侠心を発揮して気分がいいし、侍に礼を言われて、その上礼金まで頂けるという結構な商売だ。7年の放浪暮らしで15両の金を貯め込んだ助六は、死んだ母の墓でも建替えようと故郷に再び舞い戻る。ところが故郷の宿場町はやけにピリピリと神経質な雰囲気。なんでも間もなく、近くで仇討ちがあるらしい。渡りに船とはこのこと。助六はいい儲け話だとほくそ笑むが、追っ手に狙われる初老の侍こそ、じつは助六の実の父だった。侍の死後にそれを知った助六は、実父の仇討ちのために単身敵のもとに斬り込んでいこうとするが、多勢に無勢でははじめから勝ち目がない。まずはじっくり作戦を練ることにする。

 主人公の助六は24歳という設定だが、それが真田広之ではいくらなんでも老けすぎだ。これに合わせて、幼馴染みが村田雄浩と鈴木京香というのも老けすぎ。特に鈴木京香がおぼこ娘とは恐れ入る。しかし真田広之は年齢を感じさせない身体の動きで、見事に自称・助太刀屋の助六になりきっていたし、今どきこれだけ身体が動く若手俳優が他にいないという問題もあるのだろう。彼なら『EAST MEETS WEST』からのつながりで監督との間に信頼感もあるし、撮影現場では殺陣の演出を手伝ったりもしていたというから、この映画は真田広之なしには成立しなかった企画かもしれない。それでも鈴木京香はちょっとなぁと思う。せめて二十代の女優にしてくれ。村田雄浩も鈴木京香も演技は悪くないんだけど、それと役年齢とのギャップはまた別の話だと思うよ。

 映画の後半は小さな宿場全体をつかった大立ち回りになるのだが、助六が神出鬼没のゲリラ戦で大勢の侍たちを攪乱する様子は痛快。ただしこの場面では、宿場の規模や地理などの空間把握に少々難がある。黒幕である大物役人の周辺にあった人垣があっと言う間に消えてなくなるのはともかくとして、助六探索に出かけた他の役人たちはいったいどこに消えてしまったのかがよくわからない。このあたりはもっと粘っこくきっちり撮るか、もっとスピードを上げて観客に疑問すら抱かせないぐらいのテンポが必要だったと思う。ちょっと中途半端かな。でも娯楽映画としてはまずまずよくできてます。

東京国際映画祭・特別招待作品
配給:東宝
(上映時間:1時間28分)

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