6週間
プライヴェートモーメント

2001/10/25 東映第2試写室
塩屋俊が主催するアクターズクリニックの生徒と作った青春映画。
演技講習の様子が見られるのはなかなか興味深い。by K. Hattori

 印象的な脇役として数々の映画やドラマに出演している塩屋俊が、自分主催している演技学校(アクターズクリニック)の生徒たちと作った青春映画。アメリカの映画会社が間もなく製作が始まる映画に日本人俳優を出演させるため、キャスティングディレクターを派遣して日本でオーディションを開く。それは1週間に1度ずつ応募者を集め、簡単な演技演習をしては少しずつ人数を絞っていくというものだった。それはオーディションであると同時に、演技の訓練をする場ともなっている。キャスティングディレクターは単に応募者を選別するだけでなく、演技コーチをすることで若者たちの才能を引き出していく。オーディションは6週間に渡って続けられる。はたして最後に残るのは誰なのか?

 主演は新山千春と島田達樹。このふたりをはじめ、出演者のほとんどはアクターズクリニックの受講者だという。映画の作り方としては、塩屋俊がプロジェクトプランナーを務めた原田眞人監督作『バウンスkoGALS』の延長にある作品と考えてもいい。しかし今回の映画では「演技講習」が大きなモチーフになって、しかも講師役が塩屋俊本人。普段アクターズクリニックで行っていることが、そのまま映画の中に入り込むという不思議な作品なのだ。ハリウッドの映画会社やプロデューサーたちが、実際にこんな手間のかかるオーディションを行っているのかどうかはわからない。しかしこの映画からは、アクターズクリニックで行っている講習の様子がなんとなく伝わってくる。タイトルになっている「プライヴェートモーメント」とは、アクターズクリニックの案内によれば『自分らしいリアルさを見つけるためのカリキュラム』だそうで、映画の中では「自分の大切な人のために何かを作る」という感情をどう表現するかという課題として登場する。無言のまま黙々とひとつの作業をしている俳優が、その背後にある自分の感情を観ている人にどう伝えるか。それがこの映画の中で行われているオーディーションの課題であり、同時にこの映画を通して監督や出演者たちが挑んだことでもある。

 映画は序盤から中盤までが興味深く観られるし、青春映画としてもまずまず面白いと思う。僕は青春映画を「何者でもない若者が何者かになろうとしてもがくドラマ」と定義しているので、この映画はそこにドンピシャリと当てはまる。オーディション参加者たちは、売れない役者であったり、造園業のアルバイトだったり、二流のアイドルだったり、街でドラッグを売るちんぴらだったりする。彼らが「今の自分」の殻を突き破り、新しい自分へと成長し生まれ変わっていく瞬間を、この映画は描き出そうとしているのだ。定番といえば定番だし、ありきたりと言えばありきたりなのだが、印象は悪くない。

 ただし映画が終盤に差し掛かると、物語は急にギクシャクし始める。無理にドラマチックにしようとしているような感じで、それまで積み上げたリアリティが崩壊してしまうのだ。エンディングも意味がよくわからない。

2001年12月1日公開予定 新宿東映パラス3
配給:アースライズ

(上映時間:1時間42分)

ホームページ:http://www.horipro.co.jp/
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