ロック・スター

2001/09/27 ワーナー試写室
人気バンドの熱狂的なファンが当のバンドのメンバーになる。
マーク・ウォルバーグ主演の'80年代ロック映画。by K. Hattori

 1980年代半ば。人気バンド“スティール・ドラゴン”の熱狂的なファンであるクリスは、サラリーマン生活の傍ら“スティール・ドラゴン”の演奏法や歌唱法などを徹底的にコピーするトリビュート・バンド“ブラッド・ポリューション”を結成。“スティール・ドラゴン”のボーカル、ボビー・ピアーズの声と歌唱法を完璧にコピーしてみせるクリスは、週末ごとにプチ・ロックスターとして脚光を浴びる日々を送っていた。だがあまりにも“スティール・ドラゴン”一筋のクリスと、「俺たちもうカバーバンドを卒業したいんだ」という他のメンバーの間で意見が対立。クリスは他のメンバーからバンドを追い出されてしまう。だがそんな彼のもとに、憧れの“スティール・ドラゴン”から電話がかかってくる。リードボーカルのボビーがある事情からバンドを脱退するため、彼らはその代役となるボーカリストを捜していたのだ。クリスはメンバーのオーディションを見事パスし、一夜にして夢にまで見た正真正銘のロックスターに変身する。マスコミの取材攻勢、群がる熱狂的なファン、豪華なステージ、きらびやかなスポットライト、楽屋に入り込むグルーピー。酒・女・ドラッグは、ロックスタートに必須の三点セットだった。

 ワーナー配給の映画『コラテラル・ダメージ』がアメリカの連続テロ事件の影響で突然公開延期となり、その穴埋めに急遽公開が決まった映画だ。十分な広告宣伝活動が行われない上に、公開期間はわずか2週間と決まっている。こんな扱いを受けている映画だからつまらないのかというとさに非ず。主人公クリスを演じているのは売れっ子のマーク・ウォルバーグ。その恋人エミリーを演じているのは、ブラピ夫人のジェニファー・アニストン。人気と実力を兼ね備えたこのふたりに個性派の脇役陣が彩りを添え、監督は『陽のあたる教室』『101』のスティーヴン・ヘレク。映画としてはまずまず手堅い仕上がりで、特に'89年代のロックに親しんでいる30歳台以上の人には素直にお勧めできてしまう内容。事情が事情でこんな公開形態になってしまったのはお気の毒。大音響のコンサートシーンが映画の見どころだから、これはビデオで見たんじゃ迫力も半減でしょう。

 ロックバンドの舞台裏という物語は、つい最近『あの頃ペニー・レインと』という映画があったばかり。あちらは'70年代が舞台で、ロックが反体制を標榜する若者たちの音楽から、明確に大人のビジネスに変貌していく時代を描いていた。本作『ロック・スター』はそれより10年後を描いているわけだが、ここではロックが完全に商業化されているし、ミュージシャンたちもはっきりと中年のオヤジ連中になっている。ミュージシャン個人はバンドの中でいつでも取り替え可能なパーツであり、酒や女やドラッグなどもミュージシャンのカリスマ性を高めるための小道具でしかない。こうした身も蓋もない描写ができるのは、現代の若者にとってロック・スターが夢の対象ではなくなったことを意味しているのかも。

(原題:ROCK STAR)

2001年10月6日公開予定 渋谷東急他・全国松竹東急系
配給:ワーナー・ブラザース映画

(上映時間:1時間45分)

ホームページ:http://www.warnerbros.co.jp/

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