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2001/09/10 東映第1試写室
窪塚洋介がコリアン・ジャパニーズの少年を演じる青春ドラマ。
登場するキャラがみんな素敵。大好きな映画。by K. Hattori

 在日朝鮮人として民族学校に通っていた杉原は、父親がぼんやりテレビを眺めながら「ハワイだ!」と突然ひらめいたことから在日韓国人になる。民族学校もやめて日本の高校に進学した杉原は、バスケ部をケンカ騒ぎで退部したあと連日のように喧嘩を繰り返して現在24連勝中。そんなある日、彼は「桜井」と名乗る美しい少女に出会う。少しずつうち解け、親しくなっていくふたり。だが杉原は自分が在日であることを、なかなか彼女にうち明けられない……。金城一紀の第123回直木賞受賞作を、劇団「大人計画」の宮藤官九郎が脚色し、『ひまわり』『贅沢な骨』の行定勲が監督した青春ドラマ。主人公の杉原を演じているのは、『溺れる魚』の怪演も印象に生々しい窪塚洋介。ヒロインの桜井を演じるのは『バトル・ロワイアル』の極悪女と180度違う可憐でチャーミングな役となる柴崎コウ。物語はこのふたりを中心に進んでいくが、語りは常に杉原の一人称。物語の中で「これは恋愛の話だ」と何度も強調されるものの、実際は杉原という主人公が大勢の人々とのぶつかり合いや交流を通して、人間的に一回りも二回りも大きく成長していく様子を描き出している。なんとも気持ちのいい、ストレート剛速球の青春ドラマなのだ。

 登場人物がとにかく個性的。主人公の杉原が魅力的なキャラクターになっているのはもちろんだが、そんな杉原を育て上げた周辺環境というのがこれまたスゴイ。特に両親のキャラがずば抜けている。父親の秀吉を演じるのは百戦錬磨の映画俳優山崎努。母親の道子を演じているのは演技力ナンバーワンの曲者女優大竹しのぶ。実力のある俳優で中心部をがっしり組み上げつつ、周辺に存在するワンポイント出演の脇役たちにもじつに贅沢な配役をする厚みのあるキャスティング。例えばタクシー運転手役の大杉漣、巡査役の萩原聖人、やくざの親分を演じている上田耕一などの存在感。ワンポイント出演ではないが、塩見三省演じる民族学校の教師もすごい迫力だし、山本太郎が演じている民族学校の先輩もいい面構えをしている。行定監督はこれがメジャー初監督になるわけだが、製作環境が整って配役に贅沢ができるようになると、こんなにゴツゴツと骨っぽい映画を撮るのですね。

 この映画には日本国内における在日韓国朝鮮人の問題が大きなモチーフになっており、当然ながらチャラチャラした風俗描写で流してしまえるようなものではない。しかしそれを「国籍とは」「差別とは」などという社会派の視点から語らず、杉原という主人公がぶつかる等身大の問題に引き下ろして生々しい青春ドラマにしているところがいいのだ。青春ドラマというのは結局のところ、少年少女が外部から与えられた役割やレッテルをはねのけて「自分とは何者か」と自問自答するドラマに他ならない。「俺は俺なんだよ!」という主人公の叫びはありきたりだが、こんなありきたりな結論に到達するために、人間は青春時代を悶え苦しみ抜くのです。窪塚洋介の芝居が少し硬いのは気になるが、映画はよく出来ている。

2001年10月20日公開予定 全国東映系
配給:東映
(上映時間:2時間02分)

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