マイアミ・ガイズ
俺たちはギャングだ

2001/08/29 SPE試写室
元ギャングの老人たちがコロンビアマフィアの抗争に巻き込まれる。
ハリウッドのベテラン俳優が個性的な老ギャングを熱演。by K. Hattori

 子供の頃からギャングに憧れ、大人になってからは立派なギャングとして社会の裏道を我が物顔で歩いていた4人の男たち。金と酒と女に溺れ、傷害・暴行・殺人・恐喝も日常茶飯。刑務所と娑婆を行ったり来たりの人生は、まさに波瀾万丈で楽しいものだった。だが名うてのギャングも寄る年波には勝てない。残った金でマイアミの高齢者用マンションに入居し、年金と小さな仕事で細々と食いつないでいる有様だ。だがここ数年のマイアミは、若者たちのリゾート地になって地価が高騰。家主は払いのいい若い客目当てに、老人達を部屋から追い出しにかかる。4人組は身よりのない行き倒れの死体を使って、ある計画を実行しようとしたのだが……。

 リチャード・ドレイファス、バート・レイノルズ、ダン・ヘダヤ、シーモア・カッセルが元ギャング4人組に扮している。年老いて一度は現役を退いた元ギャングたちが、ある事件をきっかけに昔気質の血を騒がせ、やっかいな抗争事件に巻き込まれていくというコメディ映画だ。タイプの違う4人の名優が、それぞれ個性的なギャングを演じて大いに笑わせてくれる。半死半生の目に遭うと奇抜なアイデアが浮かぶ“バッツ”。普段はまったく無口でほとんど何も喋らない“マウス”は放火の天才。少しトロイ“ブリック”は気のいい男。そして切れ者のボビーは生き別れの娘を捜している。面白い映画だと思うが、ドレイファス演じるボビー役がこの映画のネックになっているような気もする。

 他のメンバーが実年齢そのままで勝負しているのに対し、54歳のドレイファスは「老い」を演技で表現しようとしている。これがちょっと苦しいのだ。周囲の役者たちもみんな「演技」に付き合ってくれるならバランスが取れるだろうが、他の3人はまるで地のまま「私は老人です。しかし元気な老人です!」と存在感をアピールできるのだから、ドレイファスの不利は明らか。バート・レイノルズなんてドレイファスに比べればまるで大根なのに、こういう映画では地のまま勝負できるレイノルズの方が迫力がある。ドレイファスの演技巧者ぶりは周囲から突出してしまい、かえって役を小さく萎縮させてしまったように思う。これはドレイファスの問題ではなくて、キャスティングの問題なんだけど。

 しかしそのドレイファス問題にさえ目をつぶってしまえば、この映画は結構面白いのだ。悪ガキがそのまま大人になり、さらに老人になってしまったような男たちはなかなか魅力的。昔取った杵柄で犯罪に手を染めるたび、歯車がひとつずつずれて別の大事件を生み出しても、大騒ぎすることなく次の手を考える悠然とした態度には憧れてしまう。映画としてのまとまりは必ずしもよくないのだが、ベテラン俳優たちが見せる余裕綽々の演技を眺めつつ、ニヤニヤ笑っているのはなかなかに心地よい。

 原題は『The Crew(構成員)』だが、これを『マイアミ・ガイズ』という邦題にしたのはなかなかいいセンス。もっともこのパロディがわかるのも、それなりの年齢ね。

(原題:The Crew)

2001年10月27日公開予定 シネマ・メディアージュ
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
配給協力・問い合せ:メディアボックス
(上映時間:1時間27分)

ホームページ:http://www.spe.co.jp/

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