パンダ・アドベンチャー

2001/08/16 東京アイマックス・シアター
中国で捕らえたパンダを初めてアメリカに運んだ女性の実話。
アイマックスの巨大スクリーンに中国の風景が栄える。by K. Hattori

 ぬいぐるみのような愛くるしさで世界中の人々に親しまれているジャイアントパンダが、中国から東京の上野動物園にやってきたのは昭和47年(1972年)。僕も祖母に手を引かれて上野動物園までパンダを見に行ったが、パンダ舎の前は黒山の人だかりで、僕はすぐに迷子になってしまったことを思い出す。上野動物園はパンダのおかげで入園者が激増したという。「人寄せパンダ」という言葉は、おそらくこの頃できたに違いない。だがそれからほんの百年ほど前まで、パンダは世界にその存在さえ知られていない幻の動物だった。パンダがヨーロッパに紹介され動物学上に登場したのは、19世紀後半の1869年のことに過ぎない。だが当時はパンダの生態についてはまだ何も知られておらず、肉食の獰猛な獣だと考えられていた。パンダの生態がある程度正確に知られるようになるのは、それから半世紀以上たってからだ。この映画は1930年代の中国を舞台に、アメリカに生きたパンダを初めて連れ帰ったルース・ハークネスの実話を映画化したアイマックスの大型映画だ。

 1930年代半ば。アメリカの動物園から依頼を受けた冒険家ウィリアム・ハークネスは、生きたパンダを捕らえるために中国に渡るが、現地で熱病にかかって急死してしまう。彼の妻ルースは高名なファッションデザイナーだったが、中国に渡って夫の遺品を引き取ると、亡き夫の足跡をたどるように中国奥地の探検に向かう。途中で出会った悪名高いハンターとの確執。中国人ガイドとの友情。少数民族の村で出会った人々との交流。そしてついにルースは、生きたパンダと直接対面する。ルースはハンターに親を殺された仔パンダを救出し、アメリカの動物園へと連れ帰る。1936年のことだ。

 幻と呼ばれる野生動物を自然の生態環境から引き離してしまうことに対しては、現代の目から見れば批判もあるだろう。この映画はそのあたりをうまくボカして、ドラマの中心を「パンダ捕獲のための冒険」から、中国奥地の雄大な自然とそこに暮らす人々の暮らしに置き換えている。映画の原題が『CHINA: THE PANDA ADVENTURE』になっていることが、それを象徴的に示しているではないか。映画のテーマはパンダ以前に、スケールの大きい中国の風景なのだ。アイマックスの巨大なスクリーンに映し出される中国の風景は雄大で、高精細な画面からは空気に漂う水しぶきや霧のひんやりした肌触りと、森の中の湿った土の匂いまでが伝わってきそうなほどだ。

 自然環境の中で遊び回るパンダの姿を撮影するにはものすごく大きな苦労があったらしいが、パンダの映像そのものにはあまり面白みを感じられなかった。それより僕が面白く感じたのは、ルースが初めて訪れた夜の上海の賑わいや、旅の途中で見かけた大道芸、そして川を小さなボートやいかだでさかのぼる時に見える風景の素晴らしさ。中国らしい風景というとシルクロードや万里の長城など歴史を前面に出すことが多いのだが、この映画では人間の手が触れていない大自然を前面に出している。

(原題:CHINA: THE PANDA ADVENTURE)

2001年9月1日公開予定 東京アイマックス・シアター
配給:アイマックスジャパン(株)
(上映時間:50分)

ホームページ:http://www.sonymusic.co.jp/Movie/IMAX/

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