インティマシー
親密

2001/08/16 日本ヘラルド映画試写室
割り切った大人同士の関係からいつしか愛情が芽生える。
愛に疲れ憔悴していく主人公たちの悲劇。by K. Hattori

 ハニフ・クレイシの小説「ぼくは静かに揺れ動く」を、『王妃マルゴ』『愛する者よ、列車に乗れ』のパトリス・シェローが脚色・監督したラブストーリー。互いの名前すら知らない中年の男女が週に1度の関係を持つようになる。割り切った身体だけのつながりだと考えていた男は、やがて彼女の素性に興味を持つ。彼は部屋を出た彼女をそっと追いかけ、何度かの尾行の末、とうとう彼女が売れない女優であることを突き止める。小さな劇場で上演されているテネシー・ウィリアムズの芝居。彼女は主演女優だ。だが狭い客席で彼女の夫と子供の姿を見つけた時、彼女をセックスの相手だとしか考えていなかった男の中で、何か別の感情が芽生えていく……。舞台はロンドン。主人公ジェイを演じるマーク・ライランスも、ヒロインのクレアを演じるケリー・フォックスも当然英語で台詞を喋る。イギリス映画みたいだけれど、製作母体はすべてフランスにあるフランス映画。映画の内容も、いかにもフランス映画っぽいと思う。

 主人公ジェイとクレアは互いの私生活をまったく知らないまま、ただ互いの身体を激しく求め合いセックスする。ふたりがどこで知り合ったのか、どういう経緯でクレアがジェイの部屋を訪ねたのか、映画を観ていてもよくわからない。大事なのはふたりが週に1度ずつ定期的にセックスしているという事実と、その間にほとんど言葉さえ交わさないということ。女が部屋に入るとすぐにセックスし、セックスが終わるとすぐに彼女は部屋を出ていく。こんなことが実際にあり得るのかどうかは疑問だが、あり得そうもないことをさもあり得るかのようにくどくど経緯を説明することなく、この映画はいきなり「そういう関係」を観客に提示している。

 互いのことをよく知らないままセックスするような関係など、我々の周囲にもごく普通に存在する。この映画はあえて、互いのことをまったく知らないままセックスする男女を描くことで、現代の男女関係を象徴的に描こうとしているらしい。大人同士の割り切った関係。互いの生活に干渉しない、その場限りのセックスを楽しめる間柄。しかしそこに「恋愛感情」が芽生えた時、この映画の主人公たちが作ってきた関係は破綻してしまう。恋が男と女を結びつけることもあれば、恋が男と女の関係を引き離していくこともあるという不思議。割り切ったその場限りのセックスだったはずの関係は、割り切ることができず、その場限りでは終わらない関係に変わる。

 愛しているからセックスしているのではなく、セックスの中から愛が芽生える物語。それ自体は別に目新しいテーマではないが、この映画は主人公二人の抱えている事情や生活環境をたっぷり描くことで、セックスでしか互いの接点を持てない男女の悲劇を描く。ふたりはセックスの中で愛を見つける。でもその愛は、ふたりの関係を辛く苦しい状態に追いやるだけなのだ。

 クレアの夫を演じたティモシー・スポール、友人役のマリアンヌ・フェイスフル。脇役の俳優達がいい。

(原題:Intimacy)

2001年今秋公開予定 恵比寿ガーデンシネマ
配給:日本ヘラルド映画
(上映時間:2時間1分)

ホームページ:http://www.herald.co.jp/

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