ソードフィッシュ

2001/08/07 東京国際フォーラム(ホールC)
ジョン・トラボルタとヒュー・ジャックマン主演の犯罪サスペンス映画。
映画史上最強の犯罪者ゲイブリエル・シアー登場。by K. Hattori

 映画に登場する犯罪者は、いつもどこかに弱みを抱えている。例えばそれは恋人や家族に対する思いであり、仲間との友情や絆であり、自分自身の良心のうずきであり、本人の過信や仲間の裏切りであったりする。だがそうした弱みを一切持たない犯罪者が登場したら、はたしてどうなるのか? この映画でジョン・トラボルタが演じるゲイブリエル・シアーという男は、映画『狼たちの午後』で犯人たちが実際に人質を撃てなかったのが間違いだったとうそぶいてみせる。「犯人が人質を本当に射殺すれば、警察は犯人の要求を飲まざるを得なくなる。全世界に犯罪が中継される時代に、人質を見殺しにする警察なんているはずがない」。これがブラフではないことを、警察はその2分後に思い知らされることになる。銀行に籠城していたゲイブリエルは、警官が保護しようとした人質の一人を爆弾で木っ端みじんに吹き飛ばしたのだ。なぜこんなことに? 物語は4日前に戻る……。

 製作はジョエル・シルバー。監督は『カリフォルニア』『60セカンズ』のドミニク・セナ。ジョン・トラボルタが大胆不敵な銀行襲撃犯のリーダーを演じ、『X−メン』『恋する遺伝子』のヒュー・ジャックマンが彼の計画に巻き込まれる天才ハッカー、スタンリー・ジョブソンを演じている。彼はこの映画の狂言回しだ。スタンリーを計画に引き込む謎めいた女ジンジャーを演じるのは、『エグゼクティブ・デシジョン』『X−メン』のハル・ベリー。犯人グループを追う刑事を、『ブギーナイツ』『トラフィック』のドン・チードルが演じる。

 映画はオープニングでいきなり銀行前の大爆発があり、犯人たちが目的のためには手段を選ばない連中であることが観客に即座に伝わってくる。映画の上映時間は1時間39分。短い映画ではないが、最近の大作系映画が平気で2時間を超えることを考えるとコンパクトな時間割。このコンパクトさを実現できた最大の理由は、登場人物たちの背景をあえて説明せず、いきなりドラマの核心に観客を連れて行く脚本と演出の力強さにある。この映画で細かく語られているのは、いささか強引に計画に参加させられることになるスタンリーの過去と現在だけ。ゲイブリエルがどんな人物なのか、計画の裏で糸を引く上院議員がどんな意図を持っているのか、犯行に加わった他の連中はいかなる経歴の持ち主なのか……。そんなことは、この映画ではまったく説明されない。自信のない脚本家は犯人グループの性格を説明するために、犯行に至る経緯をくどくどと説明しそうだし、下手くそな監督がこの脚本を演出すれば、説明不足でわけがわからない映画になってしまっただろう。でもこの映画は、脚本があえて省略した部分を演出の力で橋渡ししていく。映画を全部観た後から「ところであれはどんな意味?」と疑問に思う点はいくつかあるだろうが、映画を観ている最中はそんなことがまったく気にならない。

 トラボルタの悪役ぶりが最高。人当たりのいい笑顔の下に、うっすらと狂気を感じさせる最高の悪党だ。

(原題:Swordfish)

2001年秋公開予定 全国松竹東急系
配給:ワーナー・ブラザース
(上映時間:1時間39分)

ホームページ:http://www.swordfish.jp/

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