PLANET OF THE APES
猿の惑星

2001/07/19 よみうりホール
かつて『2001年宇宙の旅』と評価を二分した古典SF映画を再映画化。
監督はティム・バートン。特殊メイクは確かに凄い。by K. Hattori

 フランスの小説家ピエール・ブールのSF小説「猿の惑星」2度目の映画化。原作は'68年にチャールトン・ヘストン主演で1度映画化され、その続編が何本も作られるほどのヒット作だが、今回の映画は原作の設定を借りながら物語を再構築し、映画会社の言い分によれば「リメイク(再映画化)を超えたリ・イマジネーション(再創造)」になっている。監督はティム・バートン。無数に登場する猿の特殊メイクを担当したのはリック・ベイカー。これだけでもうこの映画は、映画好きにとって「この夏絶対に観なければならない映画」なのだ。

 宇宙探査と遺伝子工学が発達した近未来。外宇宙を探検する人類の忠実な手足となって働くのは、遺伝子操作で知能を強化されたチンパンジーやゴリラなどの類人猿たちだった。ある時、宇宙空間に発生した時空の歪みに引き寄せられて、宇宙飛行士レオが遭難してしまう。彼がたどり着いたのは、猿が巨大な都市を築き、人間たちが周辺の森の中で野生生活を送る惑星だった。レオは一度猿たちの奴隷になるが、そこを脱出して不時着したポットに戻り、救命キットにある発信器を使って自分を救出に着ているはずの宇宙船を探し始める。

 オリジナル版の映画はあっと驚くラストシーンが有名だが、この映画も最後にひねりのあるオチを用意してある。ただしあまり新鮮味はない。ピエール・ブールの原作のラストシーンを知っている人なら、「ああなるほど、こうアレンジしたのか」と思うかもしれない。さらにレオの歴史認識には大きな勘違いがあり、その勘違いゆえにラストのオチが生まれているというのもちょっと不満だ。なぜ猿たちが英語をしゃべるのかに納得できたら、その後はなぜ惑星の人間たちも英語をしゃべっているのかを考えればいいのになぁ……。このあたり、あまり詳しく書くとネタバレになるので書きませんけどね。

 そんなわけでSFストーリーとしてなら僕はオリジナルの映画版の方が優れていると思いますが、映画のテンポや美術のディテールについては今回の映画の方が現代的だと思う。オリジナル版の『猿の惑星』って、今の感覚で観るとかなりカッタルイのです。ティム・バートンはエピソードをアクションでつないで、そうしたカッタルサを現代の観客に感じさせない工夫をしている。こうしたアクションつなぎが結果として物語のひ弱さを生み出している面がなきにしもあらずなのだが、とりあえず現代のハリウッド映画としてはこんなものでしょう。

 ティム・バートン監督らしさはもっぱら美術面へのこだわりとして現れていて、物語自体にバートンらしいところはないと思う。主人公レオはバートン映画のヒーローにしては素直で快活すぎ、悩みなきノータリンに見えてしまう。バートン作品の主役としてはむしろ人権擁護論者のアリ博士や、猿文明の創始者の末裔であるセード将軍の方がふさわしい。しかし『バットマン・リターンズ』のペンギンやキャットウーマンのような魅力をこれらのキャラに感じることはできないのだけれど。

(原題:PLANET OF THE APES)

2001年7月28日公開予定 日劇プラザ他・全国東宝洋画系
配給:20世紀フォックス
(上映時間:1時間59分)

ホームページ:http://www.planetoftheapes.com/

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