STACY

2001/07/09 GAGA試写室
大槻ケンヂ原作の女子高生ゾンビ映画。特撮はかなりえぐい。
やけにおセンチなのが気になるけど……。by K. Hattori

 21世紀初頭。15歳から17歳の少女たちが原因も定かでないまま次々に突然死する事件が発生。死ぬだけならまだしも、死体は数十分から半日ほどするとゾンビになってよみがえり、周囲にいる生きた人間たちを食い殺すようになる。この現象は世界中のあらゆる国々で起こり、世界中は大パニック。人々はこの少女ゾンビを“ステーシー”と呼び、その対策に頭を悩ませた。ステーシーを殺す(再殺)するために、世界規模での「ロメロ再殺隊」が組織され、ホームセンターでは誰でも簡単にステーシーを再殺できる電気ノコが売られるようになる。バラバラに解体されたステーシーの残骸は毎週金曜日ゴミ集積所に出され、自治体の回収車がそれを集めて回るようになっていた。

 大槻ケンヂの原作を加藤夏希主演で映画化したものだが、血みどろのゾンビ映画と女子高生のラブストーリーというまったく異質のものをひとつにまとめた不思議な作品。しかしラブストーリー部分に対してどれほど本気なのか、僕にはまったくわからない。面白いのは「セーラー服のゾンビ」というアイデアと、映画全編にまき散らされた過去のゾンビ映画に対するオマージュ。「ロメロ再殺隊」の名前はもちろん『ゾンビ』の監督ジョージ・A・ロメロから取られたものだろうし、ステーシーを再殺する最強ツール「ブルース・キャンベルの右手(略してブルキャン)」は、サム・ライミの『死霊のはらわた』シリーズ(続編『死霊のはらわたII』『キャプテン・スーパーマーケット』を含む三部作)の主演俳優の名前から取られている。女子高生たちが自分たちの再殺費用を捻出するため組織した「ドリュー違法再殺団」は、もちろんドリュー・バリモアにちなんだ名前だ。

 見どころは映画のあちこちにある残酷シーン。この特殊メイクは相当力が入っていて見応え十分。これは露骨にロメロの『ゾンビ』シリーズを引用していて、リアル云々というより「よくぞここまでコピーした!」と感心してしまう。作り物だとわかっていても、かなり気持ち悪いんだけどね。ステーシーを研究するマッドサイエンティストを筒井康隆が怪演しているが、これはゾンビ・シリーズ完結編『死霊のえじき』の科学者のパロディだろう。ここまでやるなら、研究室の中にこの科学者が飼い慣らしたステーシーも連れてきてほしかったけど……。

 映画としてのバランスはひどく悪い。加藤夏希と尾美としのりのエピソードなんて、どうでもいいじゃないかと僕は思ってしまう。でもこれがないと、規模を縮小しただけの『ゾンビ』『死霊のえじき』になってしまうから、そうなったらなったで時代錯誤だろうか。映画に登場するのが「セーラー服」「コスプレ」「アーミールック」というのが、何となく日本のオタク文化を象徴しているようで面白い。こういう細部以外に、この映画についてあれこれれ語るのもなぁ……。大槻ケンヂと佐伯日菜子が出てくるパロディCMも面白い。あ、これも映画の細部でしかないけれどね。

2001年8月18日公開予定 BOX東中野
配給:ギャガ・コミュニケーションズ 配給協力・宣伝:リベロ

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