VERSUS

2001/07/02 映画美学校試写室
北村龍平監督のSF活劇。ゾンビ軍団が銃を乱射。なんじゃそりゃ!
このサービス精神は『ハムナプトラ2』に匹敵する。by K. Hattori

 仲間と一緒に刑務所を脱獄した男。脱獄を外から手引きした男たちは、合流地点森の中からなかなか動き出そうとしない。しかも現場には、まったく無関係な若い女をひとり連れてきている。男たちはその場で誰かを待っていた。いったいそこで何が始まるのか。何も事情を知らされていない男たちの間に緊張感が高まり、やがてそれが暴発する。地面に横たわる真新しい射殺死体。だがそれは血まみれのままむっくりと起きあがり、驚いて立ちすくむ周囲の男たちに襲いかかる……。

 犯罪映画とゾンビ映画とチャンバラ映画とカンフー映画に壮絶なガンファイトを加えて、さらにSF風の味付けをしたアクション映画。ゾンビ映画は今までに数あれど、ゾンビを銃で武装させた映画なんて今までに見たことがない。しかもこいつら、動作も俊敏で力も強い。ゾンビが森の中を駆け抜け、木の上からジャンプして人間に襲いかかり、しかも銃を乱射するのだから、これは手強い。しかしそもそもなぜ、この森にはこんなにゾンビがいるのか? それはこの“黄泉がえりの森”が、この世とあの世をつなぐ特殊な結界のひとつだからだ。この結界を支配するものは、この世で強大なパワーを持つことが出来るという。そこでこの森では、過去にも何度も男たちによる壮絶な戦いが行われてきた。この映画に登場する宿敵二人は過去数百年に渡り、輪廻転生を繰り返しては戦いを続けてきた間柄なのだという。

 監督は『ヒート・アフター・ダーク』の北村龍平。これが劇場映画2作目だが、次回作『ALIVE』の後にはハリウッドで映画を撮ることが決まっているという日本映画界の注目株。前作『ヒート・アフター・ダーク』は、山奥の廃村を舞台に男たちが銃撃戦を繰り広げるという地域限定低予算アクション映画だったが、今回の映画も舞台になっているのは最初から最後までほぼ森の中に限定されている。出演者もまったく知らない顔ぶればかり。声はすべてアフレコ。これもまた、極度な低予算映画なのだ。しかしこの映画はそんな台所事情の苦しさを、観る者にほとんど感じさせない。予算的な苦しさをカバーするように、役者もカメラもじつによく動き回る。役者の台詞回しはぎこちなく、そこにアフレコの微妙なずれと臨場感の違いも加わってかなり不自然に思えるところもあるのだが、この映画では「主人公たちは普通の人間ではない」という設定があるため、むしろこの声の浮き上がり具合が絶妙な味になっているとさえ言える。

 アクションシーンは壮絶。主演の坂口拓はボクシングのプロライセンスを持っているそうで、彼が殴り合いをするシーンのスピード感と体の切れは最高。相手の攻撃を上体の動きだけでかわしていくシーンは、さすがプロボクサーと思わせる。チャンバラは香港流の大剣戟で、ちゃんと空中戦もあるぞ。アクション監督はドニー・イェン門下の下村勇二。やはり香港仕込みなのだ。全体に漂うB級テイストのパワー。最近のサム・ライミに「違うだろ!」とお怒りの人は、これを観なさい!!

2001年9月公開予定 シネ・アミューズ
配給・宣伝:KSS

ホームページ:http://www.kss-movie.com/versus/



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