A.I.

2001/06/24 丸の内ピカデリー2 (先行オールナイト)
スピルバーグがキューブリックの企画を引き継いで作ったSF映画。
スピルバーグ版の『ピノキオ』リメイク映画だと思う。by K. Hattori

 スティーブン・スピルバーグの新作映画だが、今回は脚本も彼本人が書いていることに注目。彼が映画の脚本を書いたのは'82年の『ポルターガイスト』以来、自分で監督・脚本を兼ねたのは'77年の『未知との遭遇』以来になる。原作はブライアン・オールディスの短編小説「スーパートイズ」だが、それを故スタンリー・キューブリックがイアン・ワトスンに依頼して映画用に脚色し、それをさらに今回スピルバーグが自作用に書き直したようだ。『アイズ ワイド シャット』の次の作品としてキューブリックが準備していた作品を、彼に私淑するスピルバーグが引き継いだ形だが、完成した映画は紛れもない「スティーブン・スピルバーグ作品」になっている。

 地球温暖化で両極の氷河が溶け、世界中の大都市が海面下に没した未来。人類の新しいパートナーとして、まったく新しいタイプのロボットが開発される。それはオーナー個人に対して、子供が親に抱くような愛情を持つようプログラミングされた新型ロボット“デイビッド”だった。重病の子供マーティンを冷凍睡眠装置で眠らせ、遠い未来に治療を受けられる可能性に期待をかけていたヘンリーとモニカの夫婦は、失った子供の代わりにデイビッドを引き取る。だがデイビッドがモニカを“ママ”と認識した直後、革命的な医療技術が開発されてマーティンは一家のもとに戻ってきてしまう。夫婦の愛情を一身に受けるマーティンを見て、デイビッドは自分も同じように愛されたいと願うのだが……。

 要するに「人間になりたいオモチャ」のお話で、これはスピルバーグが大好きなディズニー映画『ピノキオ』と同じテーマなのだ。最初に漏れ伝わってくるプロットを知ったときからそう感じたが、映画を観たらなんとそこでは『ピノキオ』(ただし原作)がそのまま引用されていて驚いてしまった。この映画はキューブリック云々という以前に、スピルバーグなりに『ピノキオ』を再映画化したものと考えた方がいいのではないだろうか。少なくとも彼はこの原作(小説か脚本かは不明)に出会ったとき、そこに『ピノキオ』と同じものを感じ取ったからこそ、この企画に飛びついたのではないか。

 ロボットが人間を愛するなら、人間にもロボットを愛する義務が生じるのではないか云々という問題提起が映画の序盤にあって、物語はその問いかけに対するひとつの回答なのだと思う。はたしてデイビッドは人間になることができるのか? 人間になるにはどうすればいいのか? デイビッドの旅は続き、最後についに彼の願いは叶ったようにも思える。僕はこのラストシーンを、一応のハッピーエンドと解釈した。もとのアイデアはワーグナーのオペラ「さまよえるオランダ人」かな。呪いを受けて死ぬことすらできない男は、最後にひとりの女の愛を得ることで魂の救済を得ることができる。

 監督本人が書いた脚本には未整理な部分も多いが、スピルバーグはそれを圧倒的な演出力で乗り切ってしまう。ハーレイ・ジョエル・オスメント君の演技も素晴らしい。

(原題:A.I. Artificial Intelligence)

2001年6月30日公開予定 全国松竹東急系
配給:ワーナー・ブラザース

ホームページ:http://www.ai-jp.net/
http://aimovie.warnerbros.com/japan



ホームページ
ホームページへ