8月15日(原題)

2001/06/15 日仏学院エスパス・イマージュ
バカンス先で妻たちが夫たちに反乱して集団失踪。
残された男たちの狼狽ぶりを描くコメディ。by K. Hattori

 海辺の貸別荘を共同で借り、三家族合同のバカンスを過ごそうと考えた男たち。だがそれぞれの仕事先から家族の待つ別荘に着いてみると、そこにいたのは子供たちだけだった。女たちは男たちが来ない間に女同士で勝手に意気投合し、自分たちだけでバカンスを楽しむためどこかに出かけてしまったのだ。これは日頃家庭を顧みない男たちに対する、女たちの反逆か? 女たちがすぐに戻るものと高をくくっていた男たちも、翌日になって彼女たちが何も連絡をよこさないことからパニック状態に陥る。女たちは本気だ。彼女たちはどこに消えた!

 主人公の男三人組を演じているのは、フランス映画界を代表する名優ばかり。妻が消えたのに携帯電話で愛人の機嫌を取ってばかりいる産婦人科医マックスを演じるのはリシャール・ベリ。いつも泣きそうな顔をしているヴァンサン役は、『倦怠』で小娘に振り回される中年男を演じたシャルル・ベルリング。恋人がスポーツインストラクターと消えたと信じ込む新聞記者ラウル役は、『家族の気分』のジャン=ピエール・ダルッサン。三人とも芝居のうまさでは文句なしだ。マックスの義娘役で、メラニー・ティエリーが花を添えている。気が強そうだけど、これがカワイイのだ! 特に美人でもないけどね。

 この映画を観て強く感じるのは、「フランスはやっぱり恋愛最優先の国なんだなぁ」ということ。日本で同じようなシチュエーションの映画を作っても、男たちがこんなに狼狽するとは思えない。夫婦者が三組も集まれば、そのうちの1組ぐらいは「女房なんて消えてくれてせいせいする」と考える亭主がいたっておかしくないと思うし、男たちが不便に感じるのはまず食事の支度や洗濯、それに子供の世話などの家事全般であって、この映画に登場する男たちのように「夫婦の絆」や「夫婦の愛」の崩壊について真剣に悩み抜く男がどれだけいるかは疑問だと思う。日本でこれと同じ状況の映画を作ったら、男三人組の内ひとりぐらいは、本当に心から喜ぶと思う。

 この映画は三人の男たちに、それぞれ別々の役目を振り分けている。愛人のいるマックスは、妻と別れて若い愛人と一緒になっても構わないと思っているのかもしれない。だから態度も少し冷めたところがある。ヴァンサンは典型的な家庭人だから、三人の中では真っ先にパニックに陥る。ラウルは彼女とまだ正式に結婚していないし子供もいない間柄なので、「関係の危機」ということについては三人の中で一番深刻に考え込まざるを得ない状況に追い込まれる。しかしこの三人に共通しているのは、彼らが間違いなく妻や恋人を愛しているということ。それが日本では考えられないことだと思う。

 この映画に登場する三人にとって夫婦(もしくはそれに準じたパートナー関係)というのは、まず第一に愛情によって結ばれたものなのだ。生活を共にする共同体という要素は、二次的三次的な問題になっている。実際は『天国で殺しましょう』みたいな夫婦の例もあるわけで、この映画はやや一面的すぎると思うけどね。

(原題:15 AOUT)

2001年6月24日10:00上映 パシフィコ横浜
(第9回フランス映画祭横浜2001)

配給:K2、ビクター
ホームページ:http://www.framework.jp/france2001/
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