ウォーターボーイズ

2001/06/06 東宝第1試写室
落ちこぼれが集まる男子校の水泳部がシンクロに挑戦!
ラストの集団演技は鳥肌ものの迫力です。by K. Hattori

 『ひみつの花園』『アドレナリンドライブ』などの作品で一部に熱狂的なファンを持つ、矢口史靖監督の最新作。祖母の遺骨をなくした女子高生の残酷物語とか、駄目OLの宝探しとか、トランク一杯の札束を巡るドタバタコメディなど、今まではどちらかというと「奇妙な素材」で勝負していた矢口監督が、今回は正統派の学園青春スポーツ根性ドラマに挑戦。しかしモチーフになっているのは「男子シンクロ」だから、やっぱり変と言えば変かもしれない。廃部寸前の男子校水泳部に美人の女性教師が顧問となって、女っ気に飢えた野郎どもが水泳部に殺到。しかし彼女が本当にやりたかったのはシンクロナイズド・スイミングだった。大半の部員が去った後、残った部員たちは独力でシンクロに挑戦し、夏休み明けの文化祭に向けて練習に励む。最後はそんな部員たちの心意気に共感する生徒たちも練習に加わり、大きなプール全面を使っての華麗な集団演技……。素材は変わっていても、物語そのものはいたってストレートなのだ。

 水泳部に残ったのが、他の運動部からは見放されたような落ちこぼればかりで、運動能力にも問題があれば、個性豊かな顔ぶれ過ぎてチームワークにも難あり。チーム内での不和が生じたり、学校の協力も得られず、新生水泳部はやはり廃部になるのか。しかし「どうせあいつらは駄目だ」とバカにされたことに発憤した部員たちは、一念発起して練習に打ち込む。やがてそれが大きな成果を生み出す原動力になる。こうした物語の展開はスポーツ映画の定石だったりするわけで、この映画はそれをきれいになぞっている。ご丁寧なことに、主人公の恋愛話まで取って付けたように盛り込まれているのはご立派。しかし映画前半部の描き方は、必ずしもスマートではない。登場する役者たちの芝居が拙く、べたなギャグもお寒い感じがするし、時折見られる奇抜な展開も唐突すぎて付いていけないところがある。シンクロの言い出しっぺだったコーチがいきなり退場する理由も「なんじゃそりゃ!」だし、水泳部が突然財政難になる理由となる魚騒動もよく考えるとおかしいのです。なぜ文化祭の1ヶ月も前から釣り堀の用意してるの? なぜ水族館の飼育係が魚の業者も兼ねているわけ? これはへんだよ。

 でもこの映画はこうした大小の欠点を、映画自体が持っている勢いと熱気でどんどん乗り越えてしまう。「この映画の中ではそういうことになってるんです!」という、まるで理由にならないような開き直りぶりがむしろ清々しいばかりです。あれこれ言い訳めいた脚本をひねくり回すより、「こういうギャグを考えてしまった」「こういう設定が面白いかも」という要素をとにかく押し込んで、それを強引に成立させてしまっている。

 圧巻はやはり文化祭での演技披露。これを観ちゃうと、もう細かいことはどうでもよくなる。このラスト10分のために、この映画はあるのです。「学園天国」がフィンガー5のオリジナル版だったことに感激しつつ、僕は大満足でこの映画を観終わることができました。

2001年9月上旬公開予定 全国東宝洋画系
配給:東宝

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