ロマンスX

2001/06/05 映画美学校試写室
愛とセックスについて描いたフランス映画。
クライマックスの出産シーンは衝撃的。by K. Hattori

 3年前に日本でも公開された『堕ちてゆく女』のカトリーヌ・ブレイヤ監督が、またまた作った愛と性をテーマにした問題作。ちなみに僕は『堕ちてゆく女』を観ているはずなんですが、内容についてはまったく覚えてません。たいていは自分で書いた感想文を読み返すと部分的にでも思い出すんですが、この映画についてはまったく思い出せるところがなかった。たぶんそれほど大きな衝撃を、この映画から受けることがなかったのでしょう。でも今回の『ロマンスX』は、記憶の中に忘れがたい刻印を残す映画です。話そのものは「愛しているのに抱いてくれない男への腹いせに、見ず知らずの男たちに体を開いてしまうヒロインが、恋人の嫉妬によって再び抱かれ妊娠するが、彼は一度手にした女を軽蔑して二度と手を出そうとはしない」という単純なもの。しかし劇中に登場する印象的な美術、セックスシーン周辺のコミカルとも思える人間描写、インターンに内診の教材にされるヒロイン、そして極めつけは出産シーンが、この映画を忘れがたいものにすることは必定です。

 この映画のクライマックスは出産シーンで、それ以前の様々なエピソードはヒロインの心の遍歴を描いているだけなのかもしれません。出産シーンでは産道から赤ん坊が出てくる場面がクローズアップで撮影されているので、これにギョッとする人も多いことでしょう。僕もかなりギョッとしました。出産シーン自体は他にもいろんな映画に登場していて、例えば『インディアン・ランナー』でパトリシア・アークエットが出産する場面などは忘れがたい印象を残すし、最近観たスタン・ブラッケージの『窓のしずくと動く赤ん坊』では、女性器のクローズアップとそこからゆっくり出てくる赤ん坊の様子がぼかしなしで画面に映し出されます。この映画では産後に胎盤が排出される場面まで記録されていているけれど、それもこれも監督の生命誕生に対する驚きと喜びの表現として素直に納得できるものだった。

 でもこの『ロマンスX』の出産シーンは、産道を通ってぶよぶよした赤黒い肉塊が押し出されてくる、かなりグロテスクなシーンになっています。物語の流れの上でも、ここは出産の喜びや新しい生命誕生の素晴らしさを描いているわけでは必ずしもない。ヒロインにとってこの赤ん坊は、自分の欲望を満たしてくれなかった恋人の代替物なのです。この赤ん坊は間違いなく彼女と恋人の間にできた子供なのでしょうが、恋人とのセックスシーンがろくに描かれていないため、むしろこの赤ん坊は彼女の過激なセックス遍歴の結果として誕生した「父なし子」という印象を観客に与えると思う。何でも映倫はこのシーンを「女性器のアップなんて前代未聞」という理由から修正させたい意向のようですが、このシーンを「猥褻だ!」と感じる人がこの世にいるとは思えない。このシーンで性的な興奮を覚える男がいたら、それはかなりの変態です。僕はむしろ、このシーンを観た男たちがインポになることを心配した方がいいと思うぞ。

(原題:Romance X)

2001年6月30日公開予定 渋谷シネ・アミューズ、シネ・リーブル池袋
配給:プレノンアッシュ

ホームページ:http://special.goo.ne.jp/movie/romancex/



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