原色パリ図鑑2

2001/06/04 日仏学院エスパス・イマージュ
パリのユダヤ人街を舞台にしたコメディ映画のパート2。
今回はユダヤ人版「スパイ大作戦」だ。by K. Hattori

 3年前に日本で公開された『原色パリ図鑑』の続編。監督のトマ・ジルを筆頭に、主演のリシャール・アンコニナやアミラ・カサールなど主要メンバーは前作通りだが、ドヴ(ドーブ)役はヴァンサン・エルバズからガド・エルマレに交代した。前作で準主役だったリシャール・ボーランジェが、今回まったく姿を見せないのは少々寂しい。前作は無一文の男がたまたま迷い込んだ被服街でユダヤ人の社長に拾われ、ユダヤ人だと誤解されたまま社長の娘と恋に落ちて結婚するまでのすったもんだを描いたラブコメディだった。カトリックの男が初めてユダヤ人社会に出会い、そこで戸惑いながらもユダヤの習慣を吸収していく(非ユダヤだとばれないように習慣を吸収せざるを得なくなる)という部分が面白かったのだが、今回はそうした描写は皆無。前作はパリの中にあるマイノリティ社会を描いているところが面白かったのだが、今回は気の合う仲間同士の友情、恋愛関係のすれ違い、家族の愛情などをベースにして、悪徳業者にだまされたエディと仲間たちの復讐を描いた娯楽編だ。

 今回は仲間内でおちこぼれの使いっ走りに甘んじているセルジュが、大富豪の娘と知り合って何とか彼女にいい格好をしてみせたいという苦心惨憺ぶりが物語の一方の軸。そしてもう一方には、不況で八方ふさがりのエディが一発逆転を念じて量販店との取引に乗り出し、そこでまんまとだまされて破産するという話が同時進行する。「何とか金を作らなければ!」ということで意見は一致し、悪徳業者相手に『スパイ大作戦』もどきの大芝居を打つわけだ。これはなかなか痛快だ。今回は映画のオープニングが007シリーズのパロディになっているし、最初から「チームワークで悪党を懲らしめろ!」というコンセプトで物語が作られているらしい。でもこれでは、主要登場人物が全員ユダヤ系という『原色パリ図鑑』の面白さは半減してしまう。今回はセルジュの結婚話があるので、彼が恋に落ちる相手を別のマイノリティ・グループやフランス人カトリックにすることも考えられるけれど、そうすると単に前作の焼き直しになってしまってつまらない。結局は映画の落としどころとして、このあたりに落ち着いたということなんだろうか。

 エディのエピソードが相対的に後退した結果、彼の妻となったサンドラの登場機会も少なくなり、アミラ・カサールの隙間が空いた前歯があまり拝見できなかったのは残念。その分、オーレ・アッティカの登場シーンが増えているからいいとするかな。前作から4年ぶりの続編だし、今回は同窓会的な映画になってしまったのだと思う。前作のファンには懐かしい顔ぶれが観られてハッピーだけど、そうでない人にとっては今ひとつピンと来ない映画かもしれない。エディが金持ちのパトリックに商売の話を持ちかける場面など、前作を観ていればニヤニヤするところだけど、この映画だけ観るとエディが人のいいパトリックをだましているように見えちゃうかも。日本公開未定。前作のファンは映画祭で観ておくこと。

(原題:LA VERITE SI JE MENS!2)

2001年6月24日15:00上映 パシフィコ横浜会議センターメインホール
(第9回フランス映画祭横浜2001)

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