ジュエルに気をつけろ!

2001/04/19 GAGA試写室
リブ・タイラーがめちゃ可愛いブラック・コメディ。
クライマックスのドタバタには大笑い。by K. Hattori


 若くて美しい女性ジュエル。彼女に出会った男は一目でその魅力のとりこになり、彼女を手に入れるためならすべてを失ってもいいと考える。年齢も経歴もまちまちな男たちは、彼女に見えないところで無様なドタバタ騒ぎを演じ続けるのだが……。ヒロインのジュエルを演じているのは、『クッキー・フォーチュン』や『オネーギンの恋文』で最近めきめき頭角を現しているリブ・タイラー。彼女と同棲している幸運(?)な男ランディを演じているのは、最近すっかり三枚目路線が定着しつつあるマット・ディロン。彼が出演しているからというわけではないが、この映画は「ひとりの女性に大勢の男が群がって騒動を起こす」という部分だけでも明らかに『メリーに首ったけ』に似ていると思う。邦題もキャメロン・ディアス主演のヒット作にあやかろうとしてか、あえて似た雰囲気のものにしたようだ。これが吉と出るか凶と出るかは、ふたを開けてみないとわからない。映画としては『メリーに首ったけ』ほどパンチがないので、これを東宝洋画系のみゆき座系列で全国展開するのはちょっと欲張りすぎだと思うけどね。大丈夫かな。

 ヒロインのジュエルについて、3人の男が証言していくという構成です。証言に合わせて過去の出来事が回想シーンとして再現され、同じ人物や事件について3方向からの視点で物語が進展していく。3人の証言はそれぞれ自己中心的で、ジュエルについて一面的な見方しかしていない。一体全体、どれが本当のジュエルやら。アイデアとしては黒澤明の『羅生門』系列のドラマです。しかしこの映画では、それがあまり効果的になっていない。複数の証言が重なり合う事件については、もっとわかりやすく三者三様の証言を食い違わせてもよかったと思う。例えば、本人としては誠実に生きているつもりのランディを、警官のデリングは「人間のクズだ!」と思っている。ランディから見れば従兄弟のカールは俗臭プンプンのつまらない男だが、逆にカールは自分を切れ者のエリート弁護士だと思っているし、従兄弟のランディをだらしがない薄ら馬鹿だと思って見下している。本人が自分自信に下す評価と、他人の目から見た評価は違う。その食い違いを際立たせることで、観客が「ところでジュエルって本当はどんな女性なの?」と思わせればいい。男たちの妄想が衝突し合ったところでクライマックスのドタバタが起こり、そこにジュエル本人がひょっこり現れて意外な素顔をさらすというのが本来の話でしょうに。極端な話、最後に登場する本物のジュエルは、リブ・タイラーが演じていなくても構わないのです。

 リブ・タイラーは性格と行動にかなり問題のある女性を演じていますが、まったく嫌味がなくて何をしても可愛らしい。人殺しをしようと盗みをしようと、彼女自身はまったく汚れないという不思議なキャラクターです。

 序盤から中盤までは笑いの切れ味がイマイチですが、終盤のクライマックスは大いに笑った。最後のオチも見事! これだけで映画の印象が大いによくなります。

(原題:One Night at McCool's)

2001年5月12日公開予定 みゆき座他・全国東宝洋画系
配給:ギャガ・ヒューマックス共同配給
ホームページ:http://www.gaga.ne.jp/jewel/


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