エル・ドラド
黄金の都

2001/04/13 松竹試写室
伝説のエル・ドラドを目指すスペイン人の詐欺師コンビ。
もう少しギャグが欲しかったなぁ……。by K. Hattori


 『プリンス・オブ・エジプト』に次ぐドリーム・ワークス製作の長編アニメーション映画第2弾。映画に登場するのは16世紀のメキシコに栄えたアステカ文明に伝わる“エル・ドラド(黄金郷)”の伝説だ。製作総指揮のジェフリー・カッツェンバーグは、古巣ディズニーに対して何かと対抗意識を燃やす人。同時期にディズニーは、南米に栄えたインカ文明をモチーフに『ラマになった王様』を作っている。こんな競合は偶然とは思えない。たぶんどちらかがどちらかの企画を盗んだのでしょう。それともアメリカでは、インカやマヤやアステカなどの古い文明がトレンディーなんだろうか。よくわからない。

 時代は16世紀。スペインの探検家コルテスが、伝説のエル・ドラドを求めて遠征に出発しようとするその時、チンケな詐欺師トゥリオとミゲールはたまたまコルテス隊の船に乗り合わせる。大西洋でボートを盗んで船を脱出したふたりは、命からがら南米某所の海岸に漂着。そこで彼らが見つけたのは、博打で巻き上げたエル・ドラドへの地図に記されたのと同じ道しるべだった。地図は本物だったのだ! ふたりは互いの夢を実現するため、道なき道を切り開きながら一路エル・ドラドを目指す。

 ふたり組の男が未開の土地で伝説の神に誤解されるというお話は、キプリングの原作をジョン・ヒューストンが映画化した『王になろうとした男』を下敷きにしているらしい。この映画は物語の舞台を19世紀のインドから16世紀の中南米に移し、主人公たちを軍人から陽気な詐欺師コンビにした。目指すのは冒険活劇ではなく、歌とギャグが満載のコミカルな映画。原題が『THE ROAD TO EL DORADO』になっているのは、ビング・クロスビーとボブ・ホープ主演で7本の映画が作られた珍道中シリーズを意識してのものだろう。脚本は『アラジン』のテッド・エリオット&テリー・ロッシオ。歌は『ライオン・キング』のティム・ライス&エルトン・ジョンのコンビ。主人公のトゥリオとミゲールの声を演じるのは、ケヴィン・クラインとケネス・ブラナー。

 コルテスというのはメキシコの征服者、アステカ文明の破壊者として悪名高い男。インカを征服したピサロと共に、ヨーロッパから新大陸に渡ったコンキスタドールの代表的な人物だ。こうした征服者たちと主人公の間に一線を画すため、この映画では主人公ふたりをコルテス隊に偶然紛れ込み、後にそこから脱出した者たちという設定にしてある。これで多少なりとも、血生臭い征服者のイメージを消そうとしたのだろう。でも結局のところ彼らが目指すのは、エル・ドラドから大量の黄金を奪ってスペインに凱旋すること。やっていることは他のコンキスタドールと変わらない。この辺はもう少し工夫の余地があったはず。また主人公ふたりのキャラクターにもっと明確な差を付けて、いびつな凸凹コンビにしておいた方がよかったと思う。この映画では主役ふたりが似すぎです。映画としての面白さは、ディズニーの『ラマになった王様』の方が10倍ぐらい上手だとおもう。

(原題:THE ROAD TO EL DORADO)

2001年7月14日公開予定 全国ワーナー・マイカルシネマズ
配給:シネカノン、アミューズピクチャーズ 宣伝:ザナドゥー
ホームページ:http://www.amuse-pictures.com/eldorado


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