名探偵コナン
天国へのカウントダウン

2001/04/02 東宝第1試写室
人気シリーズ第5弾は超高層ビルが舞台のスペクタクル。
高層ビル火災からどうやって脱出するか! by K. Hattori


 人気コミックを原作にしたアニメ映画のシリーズ第5弾。'97年から毎年新作の映画版が作られている『名探偵コナン』だが、僕は2作目の『14番目のターゲット』から観ている。殺人事件のトリックや犯人の動機などはテレビの2時間ドラマとあまり変わらないような気もするが、その背景になる舞台装置のスケールがとにかく大きくて、日本はおろかハリウッドでもとても実写では映画化できそうもないようなスペクタクルの連続に手に汗握らされる。主人公のバックグラウンドとして、高校生探偵・工藤新一と江戸川コナンの一人二役とか、新一の恋人だった毛利蘭との関係、新一に毒薬を飲ませた黒ずくめの男たちの正体は何者か、同じように黒ずくめの男たちの組織から逃げ出してきた灰原哀の存在などが、単なる謎解きと子供の探偵ゴッコに終わらない世界観の大きさを作り出している。登場人物のキャラクターもそれぞれ個性的だし、それぞれにキャラが立っていて魅力たっぷり。これだけ役者が揃って、しかも謎解きあり、アクションあり、ロマンスありと、内容盛りだくさん。サービス精神が旺盛でじつに楽しいのです。

 今回は蘭と新一のロマンスがずいぶん後退して、黒ずくめの男たちの組織を裏切ったはずの灰原哀が見せる不審な行動の背景と、超高層ビル建設関係者の間に起きる連続殺人事件の謎解きが並行して進行する。映画の後半は超高層ビルを舞台にして『タワーリング・インフェルノ』と『ダイ・ハード』を合わせたような大アクションシーンが連続する。映画に登場するツインタワービルは架空の存在だが、モデルになっているのは築地にある聖路加タワーであることが一目瞭然。ここは1階にソニーピクチャーズの試写室があるし、僕の住まいもすぐ近くなのでビルの中も外も見慣れたもの。だから余計に、今回の映画のクライマックスは興奮した。『名探偵コナン』シリーズは現代日本を舞台にして、“現実の風景のちょっと先”を描くのが上手いと思う。

 映画の導入部で毎度毎度同じように説明される、名探偵コナン誕生のいきさつと、黒ずくめの男たちの組織の存在。今回はそのオープニングに登場する黒ずくめの男たちが、物語に大きくからんでくる。ツインタワービル落成記念パーティーを、「奴の処刑台にする」と宣言する黒ずくめの男。ターゲットは工藤新一=江戸川コナンなのか? このあたりのサスペンスが、もうひとつ盛り上がらなかったのは残念。これはコナンの周囲を黒ずくめの男たちがうろつき始めたとき、同時に連続殺人事件が起きることで、観客側のサスペンスに対する関心が2方向にばらけてしまうのが原因かもしれない。最初の殺人事件前にコナン側の危機感を十分に盛り上げておき、そこでタイミング良く殺人事件を起こせば、観客は黒ずくめの男たちと殺人を結びつけてサスペンスの相乗効果が起きただろう。そのあたりの段取りが、今回はあまりうまく機能していなかったのかもしれない。そんなわけで序盤はちょっともたつくが、後半はすごく面白いぞ。

2001年4月21日公開予定 全国東宝洋画系
配給:東宝
ホームページ:http://www.toho.co.jp/movie-press/conan2001/


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