ディスティニー・イン・スペース

2001/02/27 東京アイマックス・シアター
アイマックスの巨大スクリーンに映し出される宇宙探査計画。
巨大画面で観る『2001年宇宙の旅』。by K. Hattori


 アイマックスの大画面で見る、現在進行形のアメリカ宇宙開発史。といってもこれは『ライトスタッフ』型の「まずは宇宙へ」という初期宇宙開発の歩みではなく、地球以外の惑星や太陽系外の星を探査する「外宇宙への旅」をテーマにした作品だ。

 映画の冒頭に登場するのは、巨大なパラボラを持つ電波望遠鏡。宇宙開発と言っても、むしろこの映画は「宇宙探査」にテーマを絞っている。探査のためには望遠鏡も重要なツールだし、無人の探査機や衛星天文台も大切。スペースシャトル内で行われる様々な実験は、将来人類が宇宙を本格的に旅するための基礎実験だ。この映画の中では、実際に人間が宇宙に行くことと、人間が宇宙に行くことを夢見ることとの間にあえて大きな区分を設けていない。宇宙飛行士たちは現代のヒーローだが、地上で精密な衛星を組み立てるスタッフも、衛星天文台のアイデアを考え出した学者も、この映画の中では同じぐらい重要な仕事をしたヒーローとして描かれる。

 それでもやはり映画の見どころは、スペースシャトルの乗組員たちがアイマックスのカメラで撮影した超高精細な映像の数々だろう。青く輝く地球の上に、ぽっかりと浮かぶスペースシャトル。ロボットアームの先端に付けられたカメラから、窓越しにスペースシャトルの内部をのぞき込む映像なんて、これまでSF映画でしか見たことがないものだ。この映画はそれを特撮やCGではなく、トリックなしのノンフィクションで見せてくれる。しかも超高画質で、手を伸ばせばシャトル表面の耐熱タイルに触れそうに感じるほどの臨場感だ。

 この映画は単なる記録映画ではなく、人間が宇宙旅行を夢想することを、実際の宇宙旅行の原点だと考えている。スペースシャトルの乗員が蚕棚のようなベッドに潜り込むシーンで、BGMとして流れてくるシュトラウスの「美しき青きドナウ」。ここから映像は有名なSF映画『2001年宇宙の旅』のワンシーンへと移行する。この飛躍もすごいが、『2001年宇宙の旅』の画質がじつにクリアだったのにも驚いた。映画はこの空想科学映画のシーンから、再度スペースシャトルでの実験へと戻ってくる。現実と想像力。現実の実験とSF映画の中の出来事。この両者を自由に往復するのが、宇宙開発というものなのか。なんだかすごく楽しそうな世界。

 CGで緻密に再現された金星や火星の表面。映画の終盤では遠い未来に実現するかもしれない「火星地球化計画」がCGでシミュレーションされるが、この様子は最近公開されたSF映画『レッド・プラネット』にそっくり。こうした夢物語が、じつは現在スペースシャトルで行われている数々の実験と直接つながっている。外宇宙への旅や植民は確かに夢物語だけれど、実現不能の荒唐無稽な夢じゃない。それがわかるだけでも大興奮です。

 '94年に製作された映画が待望の日本上陸。数年のブランクがあるので内容から最新情報が漏れているところもあるが、この映画の精神はきっと古びていないと思う。

(原題:DESTINY IN SPACE)

2001年3月3日公開予定 東京アイマックス・シアター
配給:アイマックス ジャパン(株)


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