ハード・デイズ・ナイト

2001/02/08 松竹試写室
ビートルズを世界の人気グループにした初主演映画。
デジタル・リミックス・バージョンでの上映。by K. Hattori


 ビートルズのメンバーが主演した、'64年製作のアイドル映画。'64年当時の日本公開タイトルは『ビートルズがやってくる ヤァ!ヤァ!ヤァ!』だった。監督はリチャード・レスター。脚本はアラン・オーエン。今でこそビートルズ、中でもジョン・レノンとポール・マッカートニーは音楽史に名を残す人物としての評価が確定しているが、この映画が製作された当時のビートルズは2年前にデビューしたばかりの長髪アイドル・ロックバンドに過ぎなかった。彼らの名前を一躍メジャーにしたのが、この映画への出演だ。今回は単なるリバイバル公開ではなく、残っているオリジナルのフィルムをきれいにリストアし、音声も5.1チャンネルのドルビー・デジタルにリミックスした新バージョンの登場となった。

 モノクロの低予算映画だが、この映画の面白さは今もあまり色あせていないと思う。まず何よりもこの映画は、'64年当時の若くて初々しいビートルズの姿が拝めるし、その演奏シーンも楽しいものになっている。音楽映画として、ミュージカル・コメディ映画として、かなりレベルの高いものになっていると思う。またこの映画の持っている編集のリズム感やテンポが、あまり古びていないことにも驚く。ビートルズの演奏している曲が使われているシーンは何度も登場するのだが、そのうちのいくつかは演奏シーン付きで、いくつかは音楽に合わせてまったく関係ないイメージがモンタージュされている。音楽と演奏シーンをシンクロさせるのは手間がかかるため、どうしたって全部を演奏シーンにさせることはできなかったのだろう。ところがこのイメージのモンタージュが、現代につながるMTVの元祖みたいで面白いのだ。

 話そのものは他愛のないもの。ビートルズの4人がテレビの人気ショーに出演するまでのすったもんだを、音楽やギャグを交えながらテンポよく描いていくだけ。話だけならどうってことはないが、面白いのはビートルズ4人のキャラクターがじつによく描けているところ。脚本家がビートルズにしばらく密着取材し、各メンバーの個性や口調をすっかり脚本の中に取り入れたのだという。ビートルズのメンバーはこの映画の中でしっかり芝居をしていて、しかもそれがいちいちサマになっているのはさすが。しかしそれも、彼らが彼ら自身の日頃の様子をそのままカメラの前で演じているからかもしれない。ジョン・レノンの権威に対する反抗心や皮肉めいたものの言い方などは、そのままドキュメンタリー映画に入れられそうなくらい自然だったりする。

 ビートルズに熱狂する10代のファンの大群という、現実のビートルズの周囲にある現実から物語を始め、最後も同じような場面で終わらせる構成も面白い。中身はまったくのフィクションだが、この映画は導入部と結末部分で世界中のビートルマニアの現実とつながっているのだ。アイドル映画の王道であり教科書のような作品で、今観ても十分面白い。翌年製作された『HELP! 四人はアイドル』も、劇場公開してくれないだろうか……。

(原題:A Hard Day's Night)

2001年春休み公開予定 丸の内ピカデリー2 全国松竹東急系
配給:松竹


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