スナッチ

2001/01/31 SPE試写室
『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』の監督最新作。
抜群のスピード感と映像感覚。いかにも今の映画だ。by K. Hattori


 監督デビュー作『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』で大いに注目され、昨年末には歌手のマドンナと結婚したことでも話題のガイ・リッチー監督最新作。『ロック、ストック〜』同様今回もギャングやチンピラたちが入り乱れて大混乱が引き起こされる集団劇だが、今回は前作と比べてはるかに配役が豪華。なんたってあのブラピが出演しているし、ベネチオ・デル・トロ、デニス・ファリーナ、ラデ・シェルベッジヤといったハリウッド映画でもおなじみの顔がぞろぞろ登場する。しかもすごいのは、こうしたスター俳優を映画の中でまったく特別扱いしないこと。他の俳優たちに混ざって、スター俳優たちもじつによく動き回る。

 内容としては『ロック、ストック〜』と同工異曲という感じもするが、スピード感は1.5倍ぐらいになっているかもしれない。正直言ってこのテンポでは、話の内容がこんがらがって付いていけない。登場人物たちの相関関係が複雑で、しかもパズルのピースのようにきちんと計算されているのだが、その関係を飲み込む前に映画がどんどん先に進んでしまう感じ。しかしそれでも観客が置いてけぼりを食ってしまったような気にならないのは、この映画が半分はストーリーを語り、半分は登場するキャラクターたちの魅力で映画を進めているからだ。各登場人物に割り当てられているエピソードのボリュームがすごい量で、このキャラクターからエピソードを膨らませていけば、この映画から5,6本は映画が作れそうなぐらいだ。今回の強烈キャラは、殺した相手をバラバラにして豚に食わせるブリック・トップという老ギャングと、殺しても死なないロシアの武器商人ボリスだろうか。ブラピの役も結構美味しいところだし、本来無関係なはずの人間がギャング同士の抗争に巻き込まれるという意味では、この役が一番観客の立場に近いのかも。

 『ロック、ストック〜』を観た俳優たちが熱狂し、ブラピなどはハリウッド映画で日頃受け取っているギャラの相場を度外視してこの映画に出演したという。この熱狂ぶりは、タランティーノが登場してきたときの雰囲気に近い。「ポスト・タランティーノ」と呼ばれた映画監督は何人もいるが、その肩書きに実態が伴った人はあまりいない。ガイ・リッチーは紛れもなくタランティーノ以降に登場したすごい才能の持ち主だし、「ポスト・タランティーノ世代」の代表的映画監督になる人だと思う。『ロック、ストック〜』がタランティーノの『レザボア・ドッグス』だとしたら、『スナッチ』は『パルプ・フィクション』みたいなものか。タランティーノは『ジャッキー・ブラウン』で大きくスタイルを変えるわけだけれど、ガイ・リッチーもいつまでも同じギャング映画の世界にとどまっていることはできないだろう。この次に彼がどんな映画を作るかが見ものだと思う。

 この映画の良さは何よりも楽しいこと。残酷なシーンも多いけれど、最後はすっきりとしたカタルシスが味わえる。映像テクニックも華麗で、まさに今の映画です。

(原題:snatch)

2001年3月10日公開予定 日比谷スカラ座・全国東宝洋画系
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント


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