レジェンド・オブ・ヒーロー
中華英雄

2001/01/18 TCC試写室
20世紀初頭のアメリカを舞台にした武侠アクションとはユニーク。
主演はイーキン・チェン。脇役も豪華な顔ぶれだ。by K. Hattori


 最近日本でも主演作品が続々公開されている香港の若手スター(といっても今年34歳)、イーキン・チェンが、人気コミックのヒーローを演じるアクション大作。制作・脚本のマンフレッド・ウォンと監督のアンドリュー・ラウは、『欲望の街・古惑仔』シリーズでイーキン・チェンをスターにしたコンビだ。『古惑仔』シリーズの番外編的な作品『硝子のジェネレーション/香港少年激闘団』でイーキン・チェンの少年時代を演じたニコラス・ツェーが、この映画では彼の息子を演じているのだが、このふたりって顔立ちがちょっと似てるのか? その他の配役もかなり豪華。往年のアクション・スター、ユン・ピョウが京劇を舞ってみせるし、スー・チーやサム・リーといった売れっ子がちょい役で出演する場面など、香港映画ファンならワクワクするはずだ。

 20世紀初頭の中国で裕福な新聞発行人の家に生まれた華英雄(ヒーロー)は、新聞の論説に反発した西洋人に両親や親族を皆殺しにされた仇を討ったため、中国にいられない身となる。英雄は単身アメリカに渡った。それから16年後、英雄の親友だった生奴(シェーン)は英雄の息子・剣雄(ソード)と共にアメリカ渡り、行方知れずになっている英雄の行方を追う。

 物語は過去16年間を回想する形で様々な人たちが英雄について証言し、それが回想シーンとして物語に挿入されていく形式だ。回想形式は長い物語をコンパクトにまとめるにはいい手法だが、この映画の場合はいささか冗漫になっている。長いドラマの名場面集というのが丸わかりで、まるで大河ドラマの総集編みたいな雰囲気なのだ。原作コミック「中華英雄」がアジア圏では大ベストセラーだというから、そこに登場するエピソードやキャラクターをなるべく生かしたいということなのかもしれないが、観ていると話が飛躍しすぎて目が回ってくる。見せ場のほとんどはアクションシーンだから、その分だけドラマが希薄になってしまうのは仕方がない。

 しかしこの映画、そもそもドラマなんてどうでもいいと製作者たちも割り切っているのだろう。切れのいい体技を見せるスタントの層の厚さ、ワイヤーアクションのレベルの高さなどに加え、デジタル合成やCGを使ったアクションシーンの面白さがこの映画の醍醐味。序盤はリアルな殺陣で始まり、徐々に荒唐無稽さを増してくるアクションの積み重ねに、僕は頬の筋肉が緩みっぱなし。とにかくあの手この手で観客をびっくりさせよう、楽しませようというサービス精神が伝わってくる。なぜか中国語を話し、詰め襟学生服を着た日本の忍者軍団との死闘と、自由の女神を解体するクライマックスは見もの。

 アメリカでの人種差別や搾取に苦しんだ中国人たちが、最後は「自由の国アメリカ」に受け入れられるというハッピーエンド。なんだかこういうストーリーに、政治的な意図を読み取るのって僕だけなのかな。現在「中国脅威論」というのが世界中にあるんだけど、それを牽制しているようにも思えるんだよね……。

(原題:中華英雄 A MAN CALLED HERO)

2001年2月中旬公開予定 新宿シネマミラノ
配給:アートポート


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