探偵事務所23
くたばれ悪党ども

2001/01/17 日活試写室
鈴木清順が昭和38年に撮ったアクション・コメディ映画。
ミュージカル風の場面がいくつかある。by K. Hattori


 鈴木清順監督が昭和38年に宍戸錠主演で撮ったアクション・コメディ映画。米軍基地近くで起きたギャング組織同士の大銃撃戦。その裏に動く黒幕を追跡するため、警察は宍戸錠扮する私立探偵に協力を依頼する。探偵は名前を変えて黒幕の組織内に潜り込む。物語自体はどうということもないのだが、映画の中で突然飛び出すレビューシーンと、なぜかそこで一緒につき合って歌って踊る宍戸錠の姿が、へんに馬鹿馬鹿しくて楽しい映画。宍戸錠と協力する警部を演じているのが金子信雄で、このふたりのすっとぼけたコンビぶりも楽しい。かなりデタラメな映画で、黒幕にしたところで闇の武器商人として何千万(現在の貨幣価値に直せば何億だろう)も濡れ手に粟の商売をしているわりには貧乏くさい。カトリックの神父に息子がいるという設定はギャグかと思ったら、単に映画の作り手側がカトリックの神父とプロテスタントの牧師の違いを知らないだけだということが後からわかったりして、あまりの大らかさに微笑んでしまう。

 犯罪組織の秘密を暴いていく話としては、道具立てなどもアラがあってあまり面白くない。主人公が盗聴器を使って黒幕の内緒話を聞く場面も、いちいちテープを巻き戻して再生しないと話が聞けないという奇妙な設定になっている。これは最後の地下室の罠を成立させるための伏線なのかもしれないが、そもそもこの盗聴器はなんだってこんなバカげた仕様になっているんだろう。イヤホンでその場でモニターしながら、同時に証拠のテープを録音する作りにしておけばいいものを……。潜入捜査では情報取得のためのスピードが生死を分ける。敵はインターフォンを使ってリアルタイムにアジト内の全情報を集めているから、テープ再生のタイムラグがあるぶんだけ主人公側が不利になるじゃないか。それならそれで、こうした不利を物語の中できちんと消化すればいいんだけど、なんだかすべてが行き当たりばったりなんだよね。地下室からの脱出も、天井のガラスを破って上から逃げられないのはなぜなんだろうか。最初からサスペンスを作るつもりなんて、この映画にはないのかな?

 宍戸錠扮する私立探偵と事務所でゆすりのネタばかり集めている助手たち、金子信雄が演じる警部など、キャラクターはどれも面白い。ミュージカルシーンもなかなか楽しい。アクションシーンも痛快。でもこの映画もまた、既存の「アクション・コメディ映画」という枠にはまりきらない部分がたくさんあって、それが僕には気になってしまった。清順監督のファンはそれが好きなのかもしれないけど、例えば川地民夫のあの死に方はないだろう。「また若い男くわえこみやがって!」って、あんたも相当に若いじゃないか。というより、相手の女がババアだよ。本来ならここで緊張感が高まらなければならないシーンだけど、鈴木清順はそれをわざとずらしたりはぐらかしたりする。それがオフビートな感覚なのか、それとも単なるズッコケなのかは、観客の受け止め方次第ということになるのかなぁ。僕はズッコケたけどね。

2001年3月公開予定 テアトル新宿
配給:日活 宣伝:スローラーナー


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