星降る夜のリストランテ

2000/12/18 TCC試写室
ローマのレストランに集まる人々のさまざまな人生模様。
観ているとお腹がすいてくる映画。by K. Hattori


 ローマにある家族経営のレストランを舞台に、夕方の開店から深夜の閉店までに起きるさまざまなエピソードを綴ったグランド・ホテル型の映画。レストランの経営を仕切る女主人、オーナーであるその夫、厨房や客席で働く従業員たち、いつも座る席まで決まっている常連客、予約を取って訪れる馴染み客、とっておきの食事のためにこの場を訪れた客、ふらりと訪れる飛び込みの客、その客たちに絵を売ったり占いをするために店に入ってくる怪しげな男たち。そこには様々な人生模様が押し込められ、涙あり笑いありのドラマが演じられる。

 同じようにレストランの一夜を舞台にした『パリのレストラン』や『シェフとギャルソン,リストランテの夜』と同趣向の映画だが、この『星降る夜のリストランテ』はそのレストランにとっての特別な一夜を舞台にしているわけではない。そこで繰り広げられているのは、そのレストランにとっての普段の日常。おそらくはこの前の日にも店の中では同じようなドラマが演じられ、翌日にもまた同じようなドラマが起きるのだ。しかし日々繰り返される日常の中にも、そこにいる人々にとっての特別な時間は存在する。昨日は別の客がテーブルに付き、明日はまた別の客が同じテーブルに付いて、同じようなドラマを演じるのだろう。しかし今夜この時この店を訪れている客たちにとって、その場所は特別な場所になっている。彼らはレストランという劇場に引っぱり出された役者たちなのだ。明日にはまた別の役者が同じ舞台に上がり、別の演目がそこで演じられるに違いない。

 複数のエピソードが並行して進行し、しかもどれも断片的に描かれるだけなのだが、どの話にも起承転結があってうまくまとまっているように思える。中心になっているのはファニー・アルダン扮するレストランの女主人だが、彼女もこの映画の中の一登場人物に過ぎない。むしろ全体を仕切っているのは、壁際の席に陣取って登場人物全体を眺めている老教授かもしれない。厨房でシェフが試作しているまかないのリゾットが、少しずつ完成していく様子で時間経過を表しているのも面白い。大学教授と浮気している女子学生が、教授の奥さんに宛てた長い手紙を読むくだりもなかなかケッサクだ。

 ファニー・アルダンやマリー・ジランの台詞はすべて吹替になっているようだが、これはしばらくすれば気にならなくなる。それより気になったのは、エピソードのつながりに妙な編集の痕跡があること。どうも一部のエピソードをカットしているようなのだ。映画の上映時間は1時間48分。しかしIMDbを参照すると、この映画のイタリアでの上映時間は2時間6分ある。つまり日本で上映するバージョンは、オリジナル版より18分も短いのだ。配給会社に問い合わせたところ、これは買い付けてくる段階で既に短いものしか入手できなかったとのこと。おそらく海外セールスの権利を保持する会社が、海外向けに短いバージョンを作ったのでしょう。う〜む、せっかくなら全長版が観たいんだけどなぁ。残念。

(原題:La Cena)

2001年3月公開予定 シネマ・カリテ
配給:アルシネテラン


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