BLUCE LEE in
G.O.D
死亡的遊戯

2000/12/14 TCC試写室
『ブルース・リー 死亡遊戯』からカットされた格闘シーンを再現。
再現ドラマは余計だと思うけどなぁ……。by K. Hattori


 1973年7月20日。ハリウッド進出第1作目となる『燃えよドラゴン』の完成直後、不世出のカンフースターであり武術家だったブルース・リーは、わずか32歳でこの世を去ってしまう。『燃えよドラゴン』撮影前に香港で部分的なアクションシーンだけが撮影済みだったリー主演の新作『死亡的遊戯』は、そのまま映画会社の倉庫に眠り続けるはずだった。だが『燃えよドラゴン』は世界的な大ヒット。リー主演の映画は、世界中に飛ぶように売れた。(リーが出演していたTVシリーズ「グリーン・ホーネット」を再編集した『ブルース・リー 電光石火』という映画まであった。)映画会社は彼が最後まで製作に執念を燃やしていた『死亡的遊戯』を完成させるため、ドラマ部分を別俳優で追加撮影してブルース・リーの遺作映画を半ばでっち上げてしまう。それが'78年に製作された『ブルース・リー 死亡遊戯』だ。しかし『死亡遊戯』の中には、リーが撮影したフィルムのごく一部しか使われなかったという。

 『BRUCE LEE in G.O.D 死亡的遊戯』は、リーが撮影したアクションシーンをできるだけ復元し、スクリーンに蘇らせようとした映画だ。『死亡的遊戯』というのは、リー自らが『死亡遊戯』に付けていたタイトル。映画の前半はブルース・リーが『死亡的遊戯』の製作をはじめてから『燃えよドラゴン』出演に至るまでの実録風ドラマに、関係者のインタビューを交えたもの。映画の後半は、本来あるべき姿に復元された『死亡的遊戯』のアクションシーンだ。正直言って、ドキュメンタリー作品としてはまったく物足りない。そもそもこの映画をドキュメンタリー映画にするつもりなど、作り手側にはなかったのだろう。アクションシーンの再編集だけでは1本の映画として長さが中途半端なので、わざわざ再現ドラマをくっつけて1時間31分にしているだけだろう。

 本来ならこのアクションシーンは、『死亡遊戯』のDVDに特典映像として収録するようなレベルのものなのだ。映画としてはあまりできのよくない『死亡遊戯』だから、DVDにこの豪華なオマケが付けば、皆争って購入するだろう。『BRUCE LEE in G.O.D 死亡的遊戯』もいずれはDVDになるだろうが、観る人は前半のドラマ部分なんて飛ばして、後半のアクションシーンしか見ないと思う。映画もそういうことを想定して作っている。ドキュメンタリーとして作るなら、アクションシーンの目玉になっているダン・イノサント、チー・ハンサイ、カリーム・アブドゥール・ジャバールとの格闘シーンがどう撮影されていたのかを、関係者の証言を交えて解説してほしいし、撮影されたものが『死亡遊戯』の中でなぜあそこまで短くカットされなければならなかったのかもきちんと語っておくべきだろう。

 この映画からわかるのは、リーの死後に作られた『死亡遊戯』と本人が作ろうとしていた『死亡的遊戯』が、じつはまったく異なった作品だったということ。後半のアクションシーンも、ファンには一見の価値があるはず。

2001年新春第1弾公開予定 シブヤ・シネマ・ソサエティ
配給:アートポート


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