ハート・オブ・ウーマン

2000/12/13 ル・テアトル銀座
メル・ギブソンとヘレン・ハント主演の小粋なラブコメディ。
ゲラゲラ笑って、ちょっとホロリ。最高です。by K. Hattori


 メル・ギブソンとヘレン・ハント主演のファンタジックなラブ・コメディ。監督は『ファミリー・ゲーム/双子の天使』のナンシー・メイヤーズ。主人公のニックは広告代理店のディレクター。バツイチの独身男だが周囲の人望もあり、男心に訴える力強い広告展開で業界に名を知られている。社内ではそろそろ制作部長に昇進するのではと囁かれている人物だ。ところが社長室に呼び出されたニックが聞かされたのは、ライバル社から女性ディレクターのダーシーを引き抜き、制作部のトップに座らせるという予想外の人事だった。彼女は数々の女性向け広告をヒットさせた有名人で、面識はないもののニックのライバルだ。部長の椅子を奪われたと感じたニックは、なんとか彼女を追い落とそうとするのだが、女心のわからない無骨なニックは、新たに担当した商品を前に右往左往するばかり。ところがそんな彼に、ある時突然、女性の心の声が聞こえる不思議な能力が授かった。ニックはダーシーの頭の中からアイデアを盗み、周囲の女性たちの思考パターンを分析し、見る見るうちに女性向け広告の分野でもトップを走るようになる。

 正反対の性格の男女が互いに衝突しながら恋に落ちるという、50年前ならスペンサー・トレイシーとキャサリン・ヘプバーン主演で映画にするようなお話。たぶんメイヤーズ監督は、そうした映画を十分に意識しているのでしょう。彼女はスペンサー・トレイシー主演のコメディ『花嫁の父』と『可愛い配当』を、『花嫁のパパ』『花嫁のパパ2』にリメイクしたとき脚本を担当しています。監督デビュー作の『ファミリー・ゲーム』は、ディズニー映画『罠にかかったパパとママ』のリメイク。古い映画をしっかりと研究し、それを現代流にアレンジすることにかけては抜群の腕前を持つ人なのです。今回の映画もひょっとしたら、何か古い映画のリメイクなのかもしれないと思ったぐらいですが、調べてみてもよくわからなかった。でもこの『ハート・オブ・ウーマン』にも、古き良きハリウッド映画の匂いがプンプンします。ここには派手なカーチェイスも爆発もSFXもないし、殺人も誘拐も恐喝も、汗みどろのセックス描写もない。それでいて、男と女のセックスにまつわるお話もちらりちらりと織り込んでいくあたりは見事なもの。

 メル・ギブソンが演じている広告マンは、『北北西に進路を取れ』でケイリー・グラントが演じた広告マン、ロジャー・ソーンヒルがそのまま現代に現れたような人物です。マザコンのフェミニストだけれど、現代の感覚から見ると男性上位を崩さない女性差別主義者。この映画は物語の枠組みとしては50年代のラブコメディに近いのですが、男性を批判的に見る眼差しはまぎれもなく現代のもの。女性監督らしい気配りが感じられる。

 映画全編にフランク・シナトラなど往年のヒット曲が使われているのも、50年代風のラブコメを感じさせる。シナトラの曲に合わせてメル・ギブソンが見事なダンスを踊るシーンに、ミュージカルファンの僕は感激!

(原題:What Women Want)

2001年正月第2弾公開予定 全国東宝洋画系
配給:ギャガ・コミュニケーションズ、東宝東和


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